首都高を走る「トンデモLUUP」も登場

さて、そういうわけで、ハードは存外よくなった。「長足の進歩」と言えるだろう。

でも、この新モビリティを使うための道路マネジメントに関しては、いまだにどうかとは思うわけだ。

電動キックは、道交法改正で誕生した噂のカテゴリー「(特例)特定小型原動機付自転車」で「ほぼ自転車」扱いである。免許も要らず、6km/h以下の「歩道モード」が装着されているならば、モードONで歩道を走ってもOK。ハンドルのバーエンドには緑ランプがついていて歩道モード(点滅)と車道モード(点灯)が分かるようになっているという。

筆者撮影
LUUPの「6km/hモードボタン」

しかし、こんなルール守られるわけがない。なにしろ6km/hなんて早歩きのスピードにすぎないのだ。

「別に車道モードで歩道通っても、時速6キロを守ればいいんだろ〜」というココロの中の言い訳とともに歩道に入り、実際は時速20キロで走る。まるで歩道上のママチャリのように。誰もが「そんなもんだよ」と思い、いつしかそれが常態化する。

実際、ルールを無視する人たちが次々と取り締まられている。警察庁の発表では、2023年7~2024年3月の摘発件数は全国で1万4432件。内訳は通行区分違反が7538件、信号無視が4935件、一時不停止の843件などで、酒気帯び運転も80件あったという。

LUUPに乗る前にテストで交通ルールを学んだはずなのに、乗っている間に忘れてしまったのだろうか。

歩道空間の安全性は蔑ろにされたまま

中には、電動キックボード禁止の自動車専用トンネルや首都高を走るというバカなLUUP乗りも登場し、当然ニュースになった。

こうした危険な乗り手たちによって、歩道上の事故が増える。

ハードの進歩によって「乗っている本人にとっての安全性は上がった」とはいえるだろう。だが。歩道上の、子供、お年寄り、障碍者、妊婦、ベビーカーほかの安全性は、蔑ろにされたままだ。その事実に変わりはない。

筆者提供
渋谷の混んだ歩道を走るLUUP

ここが最大の問題点で、結局のところ電動キックに関する数々の改良は、悪く言えば「自分さえよければいい」を助長しているに過ぎない。

そもそも「ナンバープレートをつけたビークルが歩道を平気で通れる」という現状に、トンデモない違和感がある。最初から違和感だらけだったが、今もアリアリだ。