「川勝前知事は正しかったのでは」と考え始めた
ことし2月頃から工事中のトンネル内に湧水が発生、現在も毎秒20リットルの湧水が出ている。その影響で、地域のため池や井戸で水位の低下が確認され、JR東海はトンネル掘削工事を一時中断し、対応に当たると説明した。
17日から工事を中断して、6月から地質や地下水を確認する調査ボーリングを開始することになった。
静岡県の場合、リニアトンネル工事でJR東海は大井川の湧水が毎秒約2トン減少すると試算して、その対応策を発表した。
毎秒2トンは、瑞浪市の湧水の100倍にも当たる膨大な水量である。だから、その影響について、2018年夏から6年近くも協議してきた。
岐阜県のリニア工事に端を発した不安が静岡県にまで伝わった。多くの県民が川勝氏の主張が正しかったのではないかと考えた。事実、NHKの出口調査では「川勝県政を大いに評価する」「ある程度評価する」が計67%と過半数を占めた。
2月頃からリニアトンネル内の湧水発生で地域の地下水位の低下などが起きていたのに、JR東海の岐阜県への連絡が遅れたことを問題視して、大村氏は、選挙戦の遊説の中で、JR東海の対応を厳しく批判した。
そして、「1年以内に結論を出すは、いったん保留にする」と宣言したのだ。
大村氏の主張の浅さを県民は見透かした
大村氏はこの時ようやくJR東海への不信感をあらわにした。2008年夏から静岡県でリニア問題の議論が続いているのに、なぜ、解決へ向かわなかったのかをちゃんと理解できていなかったことになる。
静岡県はJR東海の情報開示の姿勢を問題視して、当初はまともな議論にならなかった。
それなのに、大村氏は「1年以内に結果を出す」と、あまりにも軽すぎる約束をしたのだ。
つまり、大村氏の「5つの約束」は、有権者に訴えるキャッチコピーであり、内容の伴わない無責任な約束だったことを明らかにしてしまった。
有権者は、大村氏の主張の底の浅さを見透かした。
対する鈴木氏は、大村氏のように期限を区切らず、リニア問題について知事就任後にちゃんと理解した上でさまざまな対応に取り組むとしてきた。
それが当たり前のことであり、有権者はそれぞれの主張の違いを見極めたのである。
鈴木氏は派手なパフォーマンスに走ることなく、堅実な姿勢を見せて有権者の信頼を勝ち取り、リニア問題をリードできた。