「本人の目を見れば、薬物をやっていないことはわかる」

河本さんが捜査に不信感を抱いたのは、それだけではありませんでした。

「事故直後、加害者の女は前後不覚のような状態だったそうです。その姿を見ていた目撃者から、『薬物検査はしたのでしょうか?』と聞かれたので、検察官に尋ねてみたのですが、『本人の目を見れば、薬物をやっていないことはわかる』という答えが返ってきたときは、愕然としました」

写真提供=河本さん
事故直後の様子。

河本さんの加害者も、和田さんの加害者と同じく、事故直前まで酒を飲んでいたことは明らかでした。しかし、結果的に検察は『運転に影響を与えるほどの酒量ではない』と判断。「危険運転致死傷罪」ではなく「過失運転致死傷罪」で起訴し、判決ではあくまでも『アクセルとブレーキの踏み違え=運転ミス』とされ、懲役3年6カ月(未決勾留360日算入)の判決が下されたのです。結局加害者は、判決から1年で出所しています。

呼気アルコール検査は本当に正確なのか

樹生さんと恵果さんが飲酒ドライバーによる事故の犠牲になってから9年、2人の母親は今も、呼気アルコール検査の正確性に疑問を投げかけています。

飲酒検知管の精度について、和田さんはこう指摘します。

「たとえば、東京高裁の判決文(白石文子裁判長)には、警察が主に使用している手動式の『北川式SE型飲酒検知管』の指示値は、運転者の不利にならないよう、実際の濃度よりも約73.3%~80%と、低くなるよう設定されていることが明記されています。また、この検知管は気温が低いと数値が低くなるとのことで、2024年2月21日の国会では、警察庁が自ら『10~35℃で使用するものだ』と答弁していました。ちなみに私の息子が事故に遭ったとき、現場の気温は氷点下でした。加害者の呼気検査はパトカーの中で行われたとは思いますが、本当に10℃以上の環境だったかは不明です」

2023年6月、和田さんと河本さんは、上記国会で質疑を行った参議院議員の緒方林太郎氏に、「交通犯撲滅に向けた要望」と題した書面を提出していました。以下はその要望書の中の一文です。

飲酒運転は危険運転での処分が基本となることを求めます。
・危険でない飲酒運転は存在しません。飲酒運転は未必の故意であり、本来は酔いの程度に関わらず危険運転で起訴されるべきであると思います。
・飲酒運転は絶対に許さないという国の姿勢を示してください。