常に留意しているのは、「杓子定規な目標設定や指導はしない」ということ。これは自身の失敗から得た教訓でもある。
管理職になって間もない頃、「この日までにこの数字を達成してください」と一律に数値を与える管理をしていたが、思うような結果は得られなかった。
「単純な数値目標だけでは、達成できた部下はそれ以上やらなくなり、できていない部下は焦るだけ。結果的にチーム力が下がってしまいました。チームにはホームランバッターも送りバントをする人も、どちらも必要だとわかったんです」
その後は、目標達成までのプロセスに目配りする指導に切り替え、個々人の性格に合わせた指導を意識するようにした。例えば、男性と女性で、相対評価と絶対評価を使い分ける手法もその1つだ。
「同期の○○さんは頑張っているよ、と言われて『ならば自分も』と奮起するのは男性に多いですね。反対に女性は、負けず嫌いな性格でも、他人と比べられるとモチベーションが下がってしまうケースが多い。これまでできなかったことができるようになったとか、その人自身の成長を褒めるようにしています」
とにかく早いうちから部下に目配りしておくのも、期限を区切られた中で成果を挙げるためには重要だという。
「期限まであとわずかというところで追い込んでも、特に若手のV字回復は難しい。早めにプロセスを報告させて、契約にこぎ着けられる流れになっているかどうかを綿密にチェックします」
成績が低迷しがちな部下には「契約が取れなくてもいいから、今日は10人のお客様と会いなさい」などと、小さなハードルを与える。それをクリアさせることで少しずつ自信がつき、そこに成績が追いついていくという。
「まず、部下の視線を上向きにさせることです。意気消沈していればお客様にも不安感を与えてしまう。そういう意味で、笑わせるのも上司の務めかも(笑)」
※すべて雑誌掲載当時