外交手腕も光る。インドの外交はどこの陣営にも属さず、状況に合わせていいところだけ持っていく傾向が強い。

例えば、従来インドの最大武器輸入先はロシアであったが、現在では武器調達元の多様化を推進している。しかし、ロシアとの縁は切ることなく、今度は経済制裁で他国が買わなくなった石油やガスを安く買い入れている。

臆面なく自国の利益を追求する外交方針は、欧米からは節操なく見えるが、経済にもプラスに働いていることは間違いない。

インド市場の成長を日本企業は取り込めるか

絶好調に見えるインドだが、一方で課題も残されている。

ヒンドゥー至上主義を掲げて台頭したモディ首相は、02年のグジャラート州首相時代に、ヒンドゥー教徒による多数のイスラム教徒虐殺を煽ったとされている。インドの14%を占めるイスラム教徒の恨みは相当なものだ。

またヒンディー語強制策を巡って、モディ首相は南インドに多いタミル人にも嫌われている。

経済成長後には、バランスよく富の再配分を行い、国民の融和を図るべきだろうが、モディ首相にその素振りは見られない。

モディ首相は今回の選挙にも勝利し、おそらく3期目に入るだろう。しかし、モディ首相の頭の中にあるのは、残された課題の解決よりも、自らの功績をたたえる仕事のように思える。

その姿勢は、昨年議長を務めたG20でも見られた。インドの経済成長が驚異的であることは事実だが、グローバルサウスの国々を呼び集め、インドこそがそのチャンピオンであるかのごとくふるまっていた。

この成長をどう取り込むのかが日本の課題だが、一筋縄ではいかないだろう。インド人の日本に対する関心は、アメリカに払う関心の100分の1もないのが実情だ。スズキといった一部例外を除き、日本企業がこれから参入して成功するのは難しいのではいか。それが90年代にいち早くインドのIT企業と合弁会社を立ち上げ深く関わってきた私の見立てである。

(構成=村上 敬 写真=時事通信フォト)
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