サムスンだけではない。現代自動車の鄭夢九(チョンモング)会長もまた、強力なリーダーシップを持つ。

現在、「現代」と名のつく財閥は4つある。もともとは1つのグループだったが、2000年に後継者を巡るお家騒動が勃発。現代商船を核とする現代グループから鄭氏率いる現代自動車が独立した。その後さらに、造船業を中心とする現代重工業と現代百貨店が分裂し、今に至る。

現代自動車は2011年、韓国大統領の李明博(イミョンバク)氏(※雑誌掲載当時)が社長を務めていたこともある現代建設を買収し、事業拡大を進める。『現代がトヨタを越えるとき』の著書もある早稲田大学大学院の小林英夫教授は大胆な決断を下す鄭氏を評価する一方、日本の経営者について嘆く。

「彼らはまず市場の研究から始めます。検討に時間がかかるため意思決定が遅い。飛び込んで攻略しようという積極性もありません」“サラリーマン社長”の日本企業に対し、オーナー社長の韓国企業。だからこそ、韓国企業のほうが上意下達を進めやすいのは確かだが、韓国研究を40年以上続けてきた九州大学の松原孝俊教授は、もう1つの理由として韓国人の「儒教精神」を挙げる。

「朝鮮王朝期以来、1人の決定権者が組織を動かす国柄で、システムの上位者には絶対服従が基本。いまだに目上の人の前でタバコを吸うことも許されません。だから、経営者はリストラなどの非情な判断も下しやすい面があります」

松原教授は「ソフトバンクの孫正義社長の強力なリーダーシップの源流には、韓国人の血がある」と付け加えた。日本の大手企業にはリスクを負い、断を下して突き進む孫氏のような経営者は、極めて見つけにくいのが現状だろう。

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