厳しい要求もポジティブに
【柳井】なるほど、それは未来への「投資」ですね。投資というのは勝つための準備です。日本は高校生までだったら能力は世界一です。ところが、大学生になるとレベルが低くなってしまう。日本の未来を考えたときに、もっともっと教育に投資をしなければダメです。教員の給料を倍増させるくらいのことをしていかないといけない。ユニクロでは大学生に対する奨学金のプログラムを充実させていますが、個人への支援が将来の日本の投資にもつながっていくと考えているんです。
【EJ】若く、能力の高い人には、投資をすべきですね。
【柳井】投資のないところに、リターンはありません。投資する以上は期待もあるし、要求すべきことも出てきます。
【EJ】若い世代には成長のための基準を与え、それをクリアしていってほしい。私は要求し続けるつもりです。
【柳井】そう、要求し続けることは大切。要求というのは、人を成長させるためのものなんです。意欲にあふれていれば、上司からの要求をポジティブなものと捉えられるはずなんです。
時には厳しい言葉も必要
――組織のメンバーが成果を達成した場合、柳井さんはそのメンバーにどんなアプローチを取るのですか。
【柳井】私はあまり褒めないけど「よくやった」とは言います。一方で、「結果が出てないじゃないか」とハッキリと言わなければならないときもある。仕事の結果次第で生きるか死ぬか、それがビジネスのプロなんじゃないのか? と。それを叱責だと取るサラリーマンではダメです。あなたはあなたの人生しか生きられないんだから、それを大切にしなさい。自分が掲げた目標に対して妥協する姿勢を見せていたら、あなたの人生は何なんだということになってしまう――このことは伝えなければなりません。
【EJ】時には厳しい言葉も必要です。なぜ目標を達成できなかったのか? そこに成長の鍵が潜んでいますからね。
【柳井】その通りです。叱責されたと捉えず、前向きに捉えれば、いろいろとチャンスが広がるはずです。みんな自分の人生を生きているんだから、一つ一つの仕事を大切にしてほしい。とにかく自分の仕事に熱量を持って接すること。そうすれば、自分に必要なことが自然と見えてくるはずです。
【EJ】日本代表を退いた選手たちと話すと、「代表で過ごした日々が恋しい」と言うんです。日本のラグビーの未来に対して情熱を持って取り組む。それ自体が貴重な体験なんです。
――おふたりは、リーダーとしての人生をずっと続けてきたわけですよね。モチベーションをどのように保っているのですか。
【柳井】先ほどからお話ししているけれど、リーダーは居心地悪いですよ(笑)。
【EJ】日本人は居心地が良いところに安住しがちですが、柳井さんはやっぱり違いますね。
【柳井】居心地は悪いけれど、そこに希望があるじゃないですか。世界でナンバーワンになるという希望があるから、動き続けられる。エディーさんもそうじゃないですか。
【EJ】本当ですね。期待に応えられるチームをつくっていきますよ。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年3月15日号)の一部を再編集したものです。