宇宙基金とは別にスタートアップ支援もしているが…
それにしても額が大きい。
経産省は、多数の衛星を一体的に運用して、通信や観測に使う「商業衛星コンステレーション構築加速化」に約950億円を投入する。最長7年間支援し、対象は3件~5件。スタートアップや中小企業の場合、一企業に最大533億円を支援することも見込んでいる。
文科省は、高頻度で詳細に衛星から地球を観測できる「高分解能・高頻度な光学衛星観測システム」をテーマのひとつに設定。1件を対象に最長5年間で約280億円を提供する。
総務省は、「衛星量子暗号通信技術の開発・実証」で、1件を対象に5年程度で約145億円の支援をする。
目標の10年1兆円を目指し、政府は今後も基金を積み増していくという。
技術開発や研究が進展したり、ビジネス化に成功したりするなどの効果もあるだろう。だが、基金の原資が国民の税金であることを考えると、懸念すべき点も目に付く。
ひとつは、宇宙基金を出した3省庁の支援先が重なったり、政府の他の基金や予算と重複したりして、無駄を招かないかという点だ。すでにその兆候が見える。
最近の政府の産業振興策は、スタートアップ支援がブームのようになっている。
文科省や経産省は、宇宙戦略基金とは別の「中小企業イノベーション創出推進基金」に、資金を提供し、スタートアップ支援をしている。
ホリエモンロケット、カイロス、アストロスケールも
例えば文科省は昨年9月に、「民間ロケットの開発・実証」事業として、実業家・堀江貴文氏が創設した「インターステラテクノロジズ」、東京理科大発の「スペースウォーカー」、元経産省官僚が立ち上げた「将来宇宙輸送システム」の3社にそれぞれ、今年9月までに最大20億円の交付を決めた。今年3月に初打ち上げに失敗したカイロスロケットの「スペースワン」にも最大約3億円の交付を決めている。
ほかにも、宇宙ゴミ対策に取り組む「アストロスケール」に、来年1月までに最大約27億円を交付する。
経産省もこの基金を使って、昨年10月に、月面着陸を目指す「アイスペース」に最大120億円、小型観測衛星システムに取り組む九州大発の「QPS研究所」に最大41億円など、計9社への補助金交付を決めた。
基金ではないが、防衛省も宇宙スタートアップと積極的に契約を結んでいる。今年2月に、「QPS研究所」と、56億4900万円で実証衛星の試作を契約した。3月には、ロケットの能力向上の研究として、「スペースワン」とも85億円で契約した。防衛省は、「今後もスタートアップを含む民間事業者と連携しながら、民生先端技術の積極的な取り組みを図っていく」という。
ほかにも、JAXAとの共同研究などの形で支援を受けているスタートアップや企業は多い。