韓国人観光客に売れていたので現地出店したが…

同社の販売サービスの向上は日頃の教育からなる。外部講師に依頼して、お辞儀や発声の仕方、笑顔のつくり方から客に商品を出す指先の伸ばし方までひとつひとつ指導する。販売員だけでなく、教育担当の育成も行う。

ハラダと他の店の違いは、年に2回、全国の販売員を必ず本社に集め、教育をすることにある。さらに、店長、副店長には販売員に対する教育の仕方についての研修もやる。現場の販売員だけでなく、現場の管理者についてもきちんと教育をしている。

聞いていくと、ハラダには弱点がないように思えるけれど、海外進出では苦い経験があり、今のところは海外への再挑戦は考えていない。

原田はこう言った。

「7、8年前のことですが、ロッテ百貨店と新世界百貨店からラブコールをいただいて冬場だけ2年間に2度販売しました。韓国からのインバウンドのお客さまに売れていたので、本国に呼ばれ、期間限定の催事売場を出してみたのです。

しかし、売り上げは今ひとつでした。なんといっても食文化の違いがいちばん大きかった。韓国の方はスタイルをとても大事にされます。当社のラスクはバターと砂糖を使っていますから、2枚で110キロカロリー。ごはん1膳が120キロカロリーなので、ちょっと少ないくらい。そういったこともあって海外進出の難しさを実感し、今のところ海外に出ていく計画はありません」

撮影=プレジデントオンライン編集部
看板商品の「グーテ・デ・ロワ」はインバウンド客にも人気で、各地の販売店では外国人の行列も目立つ

どのパン屋にもあるラスクが、ハラダだけ成功した理由

ガトーフェスタハラダが全国的な企業になった要因のひとつに群馬から出てきたことがある。

原田もまたそれにはうなずく。

「群馬県は恵まれた土地です。江戸時代から養蚕が盛んでした。藤岡市には昔から三越の支店がありましたし、藤岡市の神社には三越が寄贈した大きな神輿があります。そして、明治時代も群馬県県令、楫取素彦かとりもとひこが養蚕をすすめ、農家の現金収入を増やしていった。それが富岡製糸場やカネボウの新町紡績所に結びつく。

また群馬県はタバコの葉っぱの産地でした。今はありませんが、日本たばこ産業の大きな工場があったり、タバコを巻く機械の工場もあったりしました。県内は裕福だったから、東京まで行かなくても県内で産業がおこっていたのです。飲食の文化ではうどんですね。うちでも群馬産小麦で『グーテ・デ・ロワ 群馬エディション』を出しています。普通のラスクよりもグルテン分が少ないので軽いです。サクサクと軽い感じ。

群馬エディションのラスクは群馬県内限定でしか売っていません。群馬はもともと消費地として大きかったので、東京にわざわざ商売しに行く企業は多くなかったのではないでしょうか」