「当社はクレームを否定しません」
グーテ・デ・ロワは2枚入りで1袋だ。26袋入りで2500円。1袋が100円以下といったところだ。この2枚入りに関しても客からのクレームがあったので、原田はすぐに改良した。
「クレームは1袋に入ったラスクの大きさでした。以前は下に小さなラスク、上に大きなラスクが載っていた場合があり、『原田さんは腹黒い。下のラスクは小さくしている』と言われたんです。腹黒いと言われたことが非常に悔しくて、ラスクをピックアップする機械のプログラム設定を変え、2枚ともサイズをほぼ均一にするようにしました。
ラスクをピックアップするための機械は当初、国内メーカーを考えていました。ところが国内のメーカーは細かい仕様を告げたら気乗り薄だったので、ドイツのシューベルト製の機械を導入したのです。シューベルト社は食品、医薬品に特化した工業用ロボットの会社です。シューベルトの機械は流れてくるラスクをカラースキャナで読み取ります。
大きさ、焼き色、穴の有無などすべてを判別して、不良品は取り除け、2枚を組にしてピックアップします。この機械を導入していたから、お客さまからのクレームに対応することができ、腹黒いと言われずに済みました。当社はクレームを否定しません。お客さまの気持ちを汲み取って商品につなげています」
他社からも評価が高い「ハラダの接客」
同社の経営の特徴は客の立場に立つこと、客の意見を汲み取ることだ。そうして、客の声にこたえて商品を開発し、日々、改良、進化させている。
例えば、ラスクにチョコレートをコーティングさせた商品は売れる。特にホワイトチョコレートの商品は売れるのだが、販売するのは10月から5月までだ。夏はチョコレートが溶けるから売らない。
夏でも溶けないようなチョコレートを使うところもある。だが、そうしたチョコレートは蝋のような食感になるからおいしくはない。そこで、同社はチョコレートをコーティングした商品は冬だけのものと決めている。客のために味と品質を守るという正直な姿勢が信用に結びついている。
わたしはかつて、とんかつ専門の「まい泉」のナンバーワン販売員に「デパ地下で見本となる販売の人はいますか?」と訊ねたことがある。すると、彼女は間髪を入れずに「ガトーフェスタハラダさん」と答えた。理由を聞くと、「デパ地下では販売員はよく代わります。でも、ハラダさんの販売の方たちはみなさん、誰がやっても同じように挨拶をして商品を売ります。販売員のサービスが一定です。あれはなかなか真似できません」
その話を社長の原田に確認したら、「それはありがとうございます。販売員と教育担当者が喜びます」と言った。