川勝知事が辞めても200メートルしか進められない
県境手前約300メートル西側に山梨県の断層帯があり、静岡県内の水が地下で引っ張られる可能性は否定できない。だから、「山梨県内の調査ボーリングをやめろ」を主張したのだ。
この懸念を議論するだけで、山梨県内のリニア工事には大きな影響が出ている。
2023年から2024年に掛けて、諸般の事情があり、山梨県内の調査ボーリングは県境手前約500メートルでストップしたままである。
だから、丹羽社長は4月30日の会見で、「5月中に調査ボーリングを再開したい」と述べた。現地点から約200メートル先へは進むことができる。
約300メートル手前で、静岡県はJR東海に「懸念」への「対応」を明らかするよう求め、議論が始まる。だから、地質構造・水資源専門部会が5月中に開催される可能性は高い。
しかし、そこで、県が本当に、山梨県内の調査ボーリングに待ったを掛けるのかどうか、リニア問題の大きな山場を迎えるはずである。
先進坑、本坑の議論がまだ控えている
ただその先には、もっと面倒な問題が控えている。
もともとは、山梨県内のリニア工事をどこでストップさせるか議論するはずだった。ところが、川勝知事は問題を「調査ボーリング」に飛躍させてしまった。
考えてみればわかるが、調査ボーリングで静岡県の地下水が山梨県に引っ張られるとしたら、調査ボーリングよりも太い穴を開ける先進坑掘削がさらに大きな問題となってしまうのだ。
調査ボーリングの断面直径は約12センチから35センチだが、先進坑のトンネル幅は約7メートルとケタが全く違う。
難波市長は、調査ボーリングによる湧水量は、先進坑掘削に比較して、1.8%程度しかないから「調査ボーリングを進めるべきだ」と発言した。
この発言を逆から考えれば、先進坑掘削で出る湧水は膨大な量となるから、「先進坑掘削はどこでとめるか考えるべき」となってしまう。
本坑であるリニアトンネルの幅は約14メートルもあり、本坑掘削では先進坑掘削とは比べられないほどの大量の湧水量が予想される。となると、大量の湧水が山梨県側に引っ張られるかもしれない。
「静岡県の地下水はどんどん抜けてしまう」(森下部会長)が現実になる恐れもある。これでは山梨県内のトンネル工事はできないことになる。
まずは、地質構造・水資源専門部会が開かれ、調査ボーリングについて、JR東海からの回答を基に協議することになる。
そのあと、山梨県の先進坑、本坑でも協議するとなれば、いつまでたっても掘削ができないことになる。まさに、川勝知事の最悪の「置き土産」である。