最悪の結婚式
そんな中、レストランウエディングの日を迎えた。開始前に控え室で準備をしていた行田さんたちは、受付の方で義母の怒鳴り声が聞こえてきたため、急いで向かう。
義母が参加者名簿に書かれていない自分の姉を無断で連れてきたため、受付係と揉めていたのだ。
「当日の飛び入り参加は認められないことを、事前に何度も説明してあったにもかかわらず……です。でも出席するはずだった私の祖父が体調を崩したため、運良く義母の姉は出席できることになりましたが、義母は悪びれる様子も感謝することもありませんでした」
それどころか、
「わざわざ姉が来てくれたのに気分を害した! 謝罪しなさい!」
と新婦である行田さんを呼びつける始末。
会が始まったら始まったで、彼の幼馴染がワインを飲みすぎて行田さんの友人に絡み、手を握ったり抱きついたり。困り果てた友人は途中で帰ってしまった。
「最悪の結婚式でした。このとき私は、『彼の周りには常識がない人、平気で人を傷つけるような人ばかりだ』『彼のことが好きでも、彼の”周り”がだめだ』と気が付き、茫然自失としていました」
2時間の家出
結婚式後も行田さんは、義母に呼び出されては聖書を読まされていた。
ある日、義母が、「牧師先生」と行田さんとの面談を決めたと言う。その夜、行田さんは「牧師先生なんかと会ったらもう逃げられないんじゃないか」という恐怖から、何もかもから逃げたくなり、ぼんやりと街を彷徨い歩いていた。
ふらふらと歩いていると携帯が鳴る。見ると夫からの着信とメールが何件もある。時計を見ると日付が変わっている。行田さんは自宅から歩いて2時間ほどかかる所まで来ていた。
電話に出ると、夫は心配していた様子で、車で迎えに来てくれると言う。
夫の車に乗ると、行田さんは泣きながら、引越してきてから義母や義きょうだいたちにされてきたことを話した。
堰を切ったように話し続ける行田さんに対し、突然夫は叫ぶように言った。
「もういい!」
びっくりした行田さんは、何も言えなくなってしまう。
「優芽子ちゃん、母さんや兄貴たちのことボロカスに言うけど、母さんたちがホンマに勧誘してくるん? 何でこんなことになるん?」
夫は自分の母親と兄の正体を何ひとつわかっていなかった。それを聞いた行田さんは笑いながら叫んでいた。
「何でって、あんたの親兄弟が異常やからやん! 私が話した事は嘘じゃない! 全部あんたがいないところでされてきた! 結婚パーティーで怒鳴るお義母さん見てるはず! それでも私を疑うなら疑えば良い!」
気づけば初めて夫を「あんた」呼ばわりしていた。(以下、後編に続く)