カネ余りと円安進行で日本株が上昇

昨年12月のFOMC(連邦公開市場委員会)でFRBは、2024年に3回程度の利下げの可能性を示した。FRBは景気の減速リスクなどに配慮し、機敏に利下げを実施する。主要投資家の楽観は急上昇した。

昨年2月の記者会見で、パウエル議長は“ディスインフレ”という言葉を何度も使った。FRBは利下げに転じるとの見方の投資家は急増した。その結果、米国の金利は低下した。

急激な金融引き締めにもかかわらず、2023年以降、米国の株価は上昇を続けた。コロナ禍対策や半導体工場建設支援などの財政支出増加により、米国の金融市場にカネ余り状況が続いた。昨年12月以降の金利低下で、米金融市場で資金の余剰感は高まった。

高い利得を求める投資家は、成長期待の高いAI関連銘柄などに資金を再配分した。3月最終営業日、米ニューヨーク工業株30種平均株価は、3万9807.37ドルの史上最高値をつけた。

「買うから上がる、上がるから買う」との強気心理の上昇、円安の進行によって、海外投資家は日本株も買い上げた。景気低迷懸念の高まる中国株を売り、わが国やインドの株式に資金を投じる投資家も増えた。新NISAの開始も円安、日本株の上昇をサポートした。3月22日、日経平均株価は4万0888円43銭まで上昇した。

米国では利下げ期待が低下している

4月、状況は変化した。3月の米非農業部門の雇用者数は予想を上回った。米国の労働市場は依然としてタイト気味であり、賃金は高止まりした。その後に発表された、米国の消費者物価指数、小売売上高も予想を上回った。

実質賃金が上昇する中、米国内の企業は価格転嫁を進めやすい。賃金上昇は家賃などのサービス価格も押し上げた。OPECプラスの一部加盟国の減産延長などもあり、原油価格は上昇し米国のガソリン価格も上昇傾向を辿った。

FRBが想定した以上に物価上昇圧力は根強い。4月中旬、FRB関係者の中から、利下げのペースは当初の予想より緩やかになるとの見方が出始めた。利下げ開始時期の後ずれ、あるいは、年内の利下げ回数の減少の可能性が示された。米金利の上昇圧力は強まった。

金利が上昇すると、企業の予想キャッシュフローの現在価値は小さくなる。株式市場全体で割安感が薄らいだこともあり、金利上昇にともない株価調整圧力は高まった。アップルやテスラの業績懸念もあり、4月中旬の米国株式市場の不安定感は高まった。