休みを「自主的に取る」ことで仕事満足度も自己効力感も上がる

そこで、すべての人が一斉に休むことは必要なのか、果たして合理的なのかという疑問が、以前にもまして強くなってくる。

働き方についての国際的な研究を調べても、休みが自由に取れるような自己スケジューリング、すなわち「柔軟(フレキシブル)な働き方」は、健康アウトカムにプラスの影響があり、労働者のウェルビーイングを高める。アメリカ国立労働安全衛生研究所の調査では、休暇を取ることで、仕事上のストレスの可能性は56%も減少し、仕事上の満足度の可能性は2倍以上増加したという(Ray & Pana-Cryan, 2021)。本調査では休暇は「taking time」と表現されており、祝日のような一斉休日ではなく、労働者が自発的に取る有休・年休を意味している。

過重労働が常態化しているような労働環境では、一斉休日はありがたい休養日であることは間違いない。しかし、働き方も多様となり、休日が増えればよい、一斉に休んだほうが気がラクという時代ではなくなってきている。

自由の概念ではないが、他人から与えられる休日ではなく、自らの意思で休日を勝ち取るほうが、自己効力感も高まり、結果的にウェルビーイングが高まることになる。

行楽シーズンに旅をするのではなく、自分でとった休日に旅行することで混雑が避けられ、快適にすごせるようになるだろう。

写真=iStock.com/Yusuke Ide
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フレキシブルな働き方とサービス水準の維持は両立するのか

「休みたいときに休める」フレキシブルな働き方は、日本では実現できるのだろうか。政府が祝日を徐々に増やしてきたのは、自分の都合で休みづらい日本社会がなかなか変わらないのを見透かしていたからだろう。そして2024年からは、働き方改革関連法により、時間外労働の上限規制が設けられた。これまで述べてきた祝日と軌を一にする官製・一斉の労働時間制限であり、フレキシブルな働き方を提供しているわけではない。ある意味、働き方改革関連法によって、ますます労働の質と量に歪みが生じている職場もあると思う。

ゴールデンウィークについては、地域によって時期を分けるというアイデアもあるという。オーバーツーリズムの酷さを見ると、検討に値するアイデアかもしれない。しかし本質的には、「それぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会」の実現が理想だろう。

それには、IT技術による効率化推進ももちろんだが、わたしたちもサービス低下に直面せざるをえないかもしれない。既にバス運転手不足による減便や、医師・看護師が過小で安全上問題のある医療・介護施設など、労働者不足の問題が顕在化しつつある。労働者不足とフレキシブルな働き方の推進は、素人からしても、従来のサービス水準の維持は難しいと思わざるをえない。

当分の間は、労働者の生活の質・ウェルビーイングの向上と、サービスレベルの相対的低下との間のハレーションが生じ続けると予測される。もっとも、外国人労働者の増加は必然的な流れであり、もしかしたらこの「静かな外圧」によって、将来的には日本は年休の取りやすい、フレキシブルな社会に移行せざるをえないのかもしれない。

American Psychological Association. (2023). 2023 Holiday Stress Survey Data Topline.
Dsouza, K. J., & Shetty, A. (2024). Tourism and wellbeing: curating a new dimension for future research. Cogent Social Sciences, 10(1), 2319705.
Ray, T. K., & Pana-Cryan, R. (2021). Work Flexibility and Work-Related Well-Being. Int J Environ Res Public Health, 18(6).
Vada, S., Prentice, C., Scott, N., & Hsiao, A. (2020). Positive psychology and tourist well-being: A systematic literature review. Tourism Management Perspectives, 33, 100631.
Wen, J., Zheng, D., Hou, H., Phau, I., & Wang, W. (2022). Tourism as a dementia treatment based on positive psychology. Tourism Management, 92, 104556.

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