これぞコペルニクス的転換

平士門さん(大船渡高校2年生)。

最後に話を聞いたのは、大船渡高等学校2年生(文系クラス)の平士門(たいら・しもん)さん。51歳のお父さんはレストランを経営し、40代後半のお母さんは大船渡の中学校で体育教師を勤めている。埼玉大学に通う22歳の長兄、仙台大学に通う20歳の次兄、そして小5の妹がいる。自宅もレストランも高台にあり、津波の被害は免れた。「何でも出すレストランなんですけど、蕎麦がおいしいです。手作りで、蕎麦粉100%で」と平さん。

大船渡での取材は9月だった。その時点で平さんは将来の進路について「ふたつあるんです。できれば美容師しながら、ダンサーやりたい」と言っていた。

「高校で初めて美容室行ったんです。大船渡市内で従兄夫婦が美容室やってて。そこで初めて切った時に、格好いいなと憧れて。中学校まで、格好とか全然興味なかったんですけど、高校で興味出てきて。ダンサーやってみたいと思ったきっかけはアメリカ(=「TOMODACHIサマー2012 ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」)なんです。前々からマイケル・ジャクソンが好きで、よく動画とか見て、真似してて。たまたまアメリカで、みんなの前でダンスを見せる機会があって、結構受けが良かったので。それで、ダンサーもいいかなと」

取材メンバーの中に、そのときの動画をiPadに収めている人がいたので見せてもらった。なるほど確かに格好いい。女子の歓声が凄いなあ。平さん、ダンサーになろうと考えたとき、学校にそのための情報、ありますか。

「ないです。ダンサーの知り合い? いないです。会ってみたいです。ダンサーになるための情報をネットから取る? いや、ネットでも調べてないです。夢だけ」

最後の「夢だけ」が気になった。取材後3カ月経ってからあらためて聞いてみた。大船渡高校を卒業したあと、まずはどのような進路を考えていますか。

「九州大学に行きたいです。今なりたい職業の第一希望が変わりまして、美容師から天文学者になりました。理由は、宇宙が好きだからです。宇宙には恒星や星雲、ブラックホール……興味深いもの、未知のものがたくさんあります。宇宙についてわからないことがあると、いつの間にか調べるようになってました。いまだに解明されていないことを予想したりするのが楽しいんです。きっかけは、中学生の頃の教科書に出てきたベテルギウス、ミラ、アルタイル、なぜかこの3つの恒星に心が惹かれたからです。太陽の数百倍も大きい恒星。宇宙には地球のような星も必ずあると思うし、今発見されてる恒星よりも何倍もの大きさの恒星があると思うし……って宇宙のことを考えると止まらなくなります(笑)」

メールの文面が熱い。しかし平さん、なぜにいきなり九州?

(次回に続く)

関連記事
300人の孫正義-18-大船渡と広田
仕事観、人生観……震災は人をどう変えたか
なぜ若者は被災地に移住したのか?[第1回]
龍馬に学ぶ「大勝負人生」の流儀 -孫 正義
柳井正VS孫正義 特別対談「起業は50代からがいい!」(1)