CO2排出量が前年比10%減った笑えない理由
3月15日には、政府は2023年のCO2の排出量が、前年比で10%減少したと発表した。一番減ったのは発電部門で、なんと20%。喜んだハーベック氏は記者会見を開き、棒グラフが表示されたパネルを手に、「ドイツは2030年の気候目標を達成できるだろう」と興奮気味に報告。そして、(公共第1テレビの言葉を借りるなら、)実に“誇らしげに”、「これこそがわれわれの政治の成果だ」とカメラの前で言い放った。
発電部門のCO2が減った理由はいくつかある。電気の輸入が増えており、それら外国での発電分のCO2がドイツには計上されていないこともその一つ。また、暖冬や、電気代の高騰に恐れをなした国民の節電努力。
ただ、何といっても一番の理由は、エネルギー多消費の産業が生産を縮小したり、国外に生産拠点を移したり、あるいは倒産してしまったことによる。電力の消費は景気の指数なので、不況になれば、必ずCO2は減る。間違っても、喜べる話ではない。
それでも政府はいまだに、CO2ゼロ達成のために締め付けを強化しており、ドイツは次第に自由経済の国から計画経済の国に変わりつつある。しかし、一つ確実に言えるのは、計画経済は失敗するということ。
日本もGXにのめり込んでいる場合ではない
その証拠に、過去の半年を振り返っただけでも、これまでドイツ経済を支えてきた優良企業の多くがドイツを去り、あるいは去ることを決めた。出ていった企業は、そう簡単には帰ってこないから、今、ドイツでは取り返しのつかないことが進行しているわけだ。しかし、肝心の政治家たちが私利私欲で固まっていて、一向に動かない。
翻って日本では、岸田文雄首相が訪米し、GX(グリーントランスフォーメーション)の推進で日米の政策協調を進めるとか。ドイツの間違いは、まさにこの不毛な環境優先政策にあるというのに、いったいなぜ? 日本には緑の党はなく、ハーベック氏はいないと思っていたが、首相自らがハーベックを演じるのか。
GXは一定の再エネ企業を潤すが、国民を豊かにすることはないし、本当の意味で環境に資することもないだろう。国がすべきは、GXにのめり込まないこと。まずは景気の向上のため、太陽や風に左右されない確実で安価なエネルギーの確保である。
そうでなければ、これだけ悲惨な状況であるドイツからさえも、世界3位の経済大国の座は取り返せない。さらに言うなら、日本はドイツに抜かされたのではなく、自分で坂道を駆け降りているのだということにも早く気づいてほしい。