風車をどんどん建てているが、“無風”の解決策はなし

CO2を削減したいなら、他国がこれから始めようとしている原発推進のほうがよほど有益だろう。ハーベック氏は、脱原発を強行した時と同じく、脱炭素でも「世界にお手本を示す」と思っているのかもしれないが、今回もおそらくどの国もついてこないだろう。

ただ、誰が何と言おうが、ハーベック氏の暴走は止まらず、現在の経済の停滞も、何か別のことが原因だと信じているようだ。例えば、「風車の建設や送電線の建設が滞っているから電気が足りないのだ」とか。ちなみに氏は、現在3万基ある風車を少なくとも10万基に増やそうとしている。しかし、風のない時の解決策はまだない。

そもそもドイツは伝統的に石炭で栄えてきた国で、西部のルール炭田地域にしても、あるいは東部のラウジッツ地方にしても、炭鉱を核とした百年来の一大工業地帯が形成されている。使っている石炭は、今では輸入炭も多いが、CO2排出をなくそうとすれば、これらの工業地帯が壊滅状態となる。代替産業の誘致など口でいうほど簡単ではない。

来年9月の総選挙までドイツ経済はもつのか

そんなわけで、現在、今の政府があと1年以上も続くと、この国はもうもたないという危機感が急激に強まっているが、総選挙は来年の9月末だし、ドイツでは解散のハードルは高い。しかも、今、解散総選挙になっても、得をするのはAfD(ドイツのための選択肢)か、あるいは、せいぜい昨年12月にできた新党BSW(通称ヴァーゲンクネヒト党)ぐらいなので、現在支持率1位のキリスト教民主同盟でさえ解散は望んでいない。

それどころか、既存の政党は、与党も野党も、これまでの政治体制と自分たちの利権を破壊しかねないAfDを何が何でも潰したいという点では、妙に意見が一致している。要するに、国民の不満や要求など「知ったこっちゃない」。ただ、それにしてもハーベック氏の脱線は著しい。

3月13日にベルリンで、「フューチャー・デイ・中産階級(Zukunftstag Mittelstand)」というイベントが大々的に開催された。

これは現政権が始めたもので、今年が2回目。中規模企業の経営者らと、政治家、官僚、駐独の外交官などが、ドイツ産業界の未来についてディスカッションする一種の見本市だ。多くのブースが並び、今年は情報を求める人たちが5000人も集まったというが、この日の目玉の一つであったハーベック経済相のスピーチが破格だった。

『ディ・ヴェルトヴォッヘ』誌が全文を掲載しているので、“ハイライト”部分を抜粋したい。