すぐに引き出せる預金がないのは危険
こういう声もあるだろう。「クレカ積立のお金は消費ではなく、資産になるのだから多くていいだろう」と。しかし、そこにも落とし穴がある。
利息がほとんどつかない銀行預金より、投資の方が増えるしポイントもつくのだから、回せるお金は全部投資しようという考えになりがちだからだ。しかし人生には想定外のことは起きるもの。不意の出費でお金が必要な時、すぐに引き出せる預金がないのは非常に危険だ。
もちろん、預金がなくても投資信託を売却すればいいのだが、不思議とそれはしたくない。生活費と金融資産は「別の財布に入れたお金」だからだ。
本来どちらも自分のお金であり、家計が苦しければ持っている資産を使うのは当然なのだが、「積み立てを続ければ複利効果で増えて大きな資産になるのだから、それを取り崩すなんて」と抵抗する。
今は生活費を借りてでも、将来のためにNISAには手を付けたくない心理が働く。
NISAのために借金をするのは本末転倒
これは大げさな話ではない。将来不安の強い若者層は、貯蓄より増えるからとできるだけNISAにお金を回そうとする。
しかし、結婚式で地元に帰省することになったというだけで赤字になり、やむなくキャッシングしたという話も聞いた。一度借りるとハードルが下がり、また足りなければ借りればいいとなる。若者が多く利用するスマホ決済事業者が、カジュアルにお金が借りられるメニューに力を入れているのも、そんな現状を映しているのではないか。
投資は余裕資金でと言われるが、それは金持ちでないとできないという意味ではなく、必要な生活費を確保したうえでの余剰金額という意味だ。
投資するのが悪いわけではないが、「みんながやっている」「クレカ投資ならポイントも貯まる」「自分もやらないと損だ」ではなく、クレカ積立のお金が引き落とされても生活費は足りるのか、10万円でも20万円でも不意の支出に使える貯蓄はあるか、まず自分の足元をしっかり見つめてほしい。
それがNISAのせいで貧乏にならないための出発点だ。