認知件数では軽トラが上位に入っている

アルファードは2023年には700台が盗まれたが、そのうち盗難と認められて車両保険が支払われた台数は約半数となる364台、同じくランドクルーザーでは643台のうち383台が支払われている。

任意保険(自動車保険)を契約している車のうち、車両保険が付保されている割合は全国平均で7割弱だが、アルファードやレクサスLXなど高級車の車両保険付保率は8割以上とみられる。それにしてはずいぶんと盗難で保険が出るケースが少ないと感じるので大手損保に聞いたところ、「盗難の事実が認められない事案もありますので……」という返事だった。これはつまり、不正請求されるケースもほどほどにあるということらしい。

注目すべきは警察庁のランキングに軽トラックが入っていることである。

6位 キャリイ115台
7位 ハイゼット107台 ※ハイゼットは軽バンも含まれる

スズキ・キャリイもダイハツ・ハイゼットも車両保険の支払いランキングには入っていない。軽トラックに車両保険を付ける人がごくわずかということだろう。

警察庁のランキングでは「隠れていた」

軽トラックの盗難が増えている事実に筆者が気づいたのには、確固たる理由がある。

筆者が自動車盗難の取材を本格的に始めたきっかけは、2020年5月に日本で盗まれたスポーツカー十数台のパーツやエンジンが、アメリカの日本車専門店で販売されていた事件だ。軽トラックがアメリカで人気という記事も、自動車メディアに書いて多くの反響があった。しかし、軽トラックの盗難が増えているという事実を知る機会はなかった。

というのも、警察庁のランキングは長い間、「自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム」の公式サイト(2022年12月末で閉鎖)で1~5位のみ公開されていたからだ。1~5位となると、例年トヨタやレクサスが独占することになり、最近増えているスカイラインなどの国産旧車スポーツカーにおいては、どれくらい盗まれているのか不明だったのである。