人気のスカイラインよりも盗難被害が多い
そこで、2022年12月、筆者も立ち上げメンバーとなっている「車両盗難厳罰化の会」の活動で法務省、財務省、警察庁、国交省など6省庁を回って諸々の要請をする機会があり、警察庁生活安全局長の山本仁氏(当時)に「認知件数のランキングをせめて10位まで公開してほしい」と直訴したのである。
その要請を受けて、警察庁から10位までの車名が初公表されたのが2023年6月。この時に軽トラの「キャリイ」「ハイゼット(軽バン含む)」が意外と多く盗まれていることが分かった。
2024年3月1日には最新のデータとして令和5年の認知件数ランキングが公表された。
キャリイは122台→115台と少し減ってはいたが順位は7位→6位、ハイゼットは95台→107台に増えて9位→7位になっている。いずれもこの10年、盗難が急増しているスカイライン(71台)よりも多い台数だ。
小さいボディの割にパワフルで実用的
日本で盗難された車の多くは、解体されてパーツとして海外に不正輸出されるほか、最近ではYahoo!オークションやメルカリなど国内で販売される例も少なくない。事情通によると、日本の軽トラが大人気となっている北米やオーストラリア、インドなどに盗難された軽トラが解体されて不正輸入されている可能性が高いという。
なぜ、軽トラが海外で人気急上昇となっているのか。そこから説明しておきたい。
軽トラックは日本独自の規格(サイズ、排気量など)で、これまで海外で同様のクルマが日本から新車として正規輸出された例は、少なくとも過去30年間ではない。
というのも、軽トラは農業、林業、漁業など第一次産業に従事する方々が使うことを前提に設計されている。二人乗りにして荷台を広くとり、農道や林道、漁港に下る細い道でも使いやすいサイズとなっている。小さいボディの割にはパワーもあって、勾配のある道路もぐんぐん上っていく。4WDであればなおさら実用性が高まる。
そして、値段はベースグレードなら70万円台(スズキキャリイKC受注生産)で購入できる。昨今、200万円を超える軽乗用車も珍しくないが、軽トラは、あくまでもシンプルな設計で機能最優先としているためお値段は据え置きなのである。