高齢ドライバーの5万人以上が、認知症の恐れあり
2022年時点の日本の人口1億2495万人のうち、65歳以上の「高齢者」の割合(高齢化率)は29.0%。日本は3人に1人ちかくが高齢者の「超高齢社会」です(一般に全人口のうち65歳以上の割合が7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」と呼ぶ)。
内閣府が2017年に公表した「平成29年版高齢者白書」では、2012年に462万人(高齢者の7人に1人)だった認知症患者は、2025年には5人に1人に当たる約700万人に達すると推定されています。
高齢化によって問題となったのが、高齢ドライバーによる交通事故の増加です。2020~22年までの3年間に起きた死亡事故のうち、4件に1件(25%)が65歳以上の高齢ドライバーによるものでした。
年をとると視力や体力が衰えたり認知機能が低下することで、事故を起こしやすくなります。75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故の発生率は10万人当たり5.7件。75歳未満の2.5件に比べ倍以上です(図表1)。
2017年からは、高齢ドライバーの事故を防ぐため、75歳以上の人が免許を更新する際は「認知機能検査」を受けることが義務付けられ、認知症と認定されると免許取り消しなどの措置を受けることになりました。
2019年にこの検査を受けた高齢ドライバー216万365人のうち2.4%に当たる5万1849人が認知症の恐れがある「第1分類」と診断されています。2022年からは認知機能検査に加え、実車での「運転技能検査」も導入されています。
また、近年は高齢者に免許の自主返納を勧める動きもあります。
しかし、それでも多くの高齢者が、今も運転を続けています。高齢者が運転を続ける背景には、過疎化により地域の鉄道やバスなどが廃線になったり、核家族化が進み高齢者だけの世帯が増えたことで、移動の手伝いを頼める家族がいないといった事情があります。
高齢ドライバー問題解決のためには、買い物や通院など、高齢者の日々の移動手段をどうやって確保していくのかを考えなければなりません。
今後も高齢化や過疎化はどんどん進行します。誰もが歳をとり、高齢になれば認知症になっても不思議はありません。認知機能が低下した高齢者が、危険な運転をせずとも社会生活を送れる環境づくりが私たちみんなの安全と安心につながります。