PB商品なのに値段は高め
「増粘剤・保存料・アミノ酸等の添加物不使用」のトマトソースハンバーグ(税抜き399円)
「過去20年以上にわたり抗生物質入り飼料を与えておりません」と書かれた和豚もちぶた(税抜き829円;100g当たり299円)
「食塩・塩分不使用の素焼きミックスナッツ」(税抜き399円)
など、いちやまマートの売り場には「身体に悪いものを販売しない」(三科社長)という言葉通りのこだわり商品がいたるところに陳列されています。
筆者は過去、数千店舗の食品スーパーを国内外で見てきていますが、ここまであらゆるカテゴリーにわたって健康に配慮した商品を、「オリジナルのPB商品」で展開している店は見たことがありません。
まさにいちやまマートは食品ではなく、健康を売る店なのだと感じました。いちやまマートのPB商品「美味安心」は、合成着色料、合成保存料、合成香料、化学調味料を使わないというオリジナル商品です。すでに500アイテムほどを開発し、年々アイテム数が増えています。
一般的に、大手量販店やスーパーは、低価格で販売できるPBの開発が常識でした。しかし、いちやまマートの美味安心はこうした価格訴求ではなく、品質重視。むしろ価格は高いものが多いのです。
他店と違う商品を高く売る
美味安心のパックご飯「ミルキークイーンごはん」(5食1パック)は679円(税抜き)ですが、いちやまマートが加盟しているAJS(オール日本スーパーマーケット協会)のPB くらし良好の「ごはん5食パック」は459円(税抜き)です。220円高いのです。NB商品であればさらに安い。
それでも美味安心のごはんパックはパックご飯の売り上げの35%程度あるそうです。良い物は高くても売れるのです。
一般的には「他店と同じような商品を安く売る」のがセオリーなのに対して、いちやまマートは「他店と違う商品を高く売る」戦略です。まさにスーパー業界の商品イノベーションです。
なぜこのような戦略をとるに至ったのか。いちやまマートの歴史とそのこだわり哲学について見てみましょう。
実はいちやまマートのイノベーションは今に始まったことではありません。それはいちやまマートの歴史年表を見ると分かります。
いちやまマートはもともと菓子・果実店として創業し、その後、スーパーとして成長していきます。現在は山梨、長野に15店舗を展開し、売上高は258億円(2023年時点)。ローカルスーパーとしては比較的大きな規模です。
ここまでくる過程には、創業者であり三科社長の父・十三氏の活躍があります。