うんこの形・色が教えてくれる体の変化
「うんこ」は、体の中のさまざまな情報を教えてくれます。とはいえ、うんこは言葉や文字を使えませんから、色や形、硬さ、においなどで、私たちにサインを出しているのです。
私たち医師も、うんこの状態から、ある程度、腸の状態を予測していきます。その目安のひとつになるのが「ブリストルスケール」。これは1997年にイギリス・ブリストル大学の教授が発表した、便の状態を示す基準となるもので、医療現場でも広く使われています。
うんこの「形」と「性状」をもとに7段階に分けられた「ブリストルスケール」は、日々の自分のうんこの状態を把握するためにも覚えておきたいものです。
健康なうんこは黄土色をしています。この色は「胆汁」に含まれる黄色い色素によるものです。「胆汁」は肝臓でつくられる黄褐色の液体で、胃で溶けきれなかった脂肪を十二指腸内で分解する働きをしています。このとき、便に胆汁の色がついて黄土色になるのです。
その後腸の中にとどまる時間が長いと、水分が余計に吸収されてしまうため、便秘気味のうんこは濃い茶褐色になり、反対に消化不良で早く出てしまう下痢気味のときは黄色味が強くなるのです。
黄土色から茶褐色のうんこは健康の証し。けれど食べたものや体調、あるいは病気などによってうんこの色は変わってきます。ここからはうんこが「色」で我々に伝えようとしている体の変化について見ていきましょう。
真っ黒なら胃の中で出血が起きている可能性
〈黒〉
黒いうんこは便秘が原因の場合と、食道、胃、十二指腸、小腸など消化器官からの出血が時間を経て黒く変色している場合があります。胃潰瘍や胃がんになると胃の中で出血が起こります。胃の中には胃酸があるため、その影響で血の中にあるヘモグロビンは酸化され、ドス黒い色の血に変色するのです。
まるでコールタールのような便になるため、これを「タール便」と呼びます。コールタールのイメージがつかない方は、イカスミパスタの色を思い出してみてください。イカスミパスタなんて食べていないのに、あのように真っ黒の便が出たら、胃の中で出血が起きているのかもしれません。可能性のある病気としては、十二指腸潰瘍や胃潰瘍、胃がんなどが疑われます。
また、貧血の治療として鉄剤を飲んでいる場合も黒いうんこが出ます。
黒のコロコロ便(type-1)
便秘がひどく、まるで木炭のように真っ黒でコロコロしたうんこが続く場合、水分を多めにとって様子をみましょう。それでも改善されない場合は、何か病気が隠れているかも。
黒の硬い便(type-2)
アルコールやお肉を過剰摂取すると胆汁の分泌量が減り、うんこが黒くなってしまう場合があります。胆汁はうんこをなめらかにして排出しやすくする働きもあり、胆汁が減ると便秘にもなりやすくなるので注意が必要です。
黒の普通便(type-4)
イカスミパスタやお肉、黒い食べ物などをたくさん食べたあとの黒いうんこは食べ物の色が出ているだけかもしれません。一時のものであれば心配なし。ただし、それが続く場合は病気が隠れていることがあるので、毎日うんこを確認しましょう。
黒のやや軟らかい便(type-5)
食道や胃、十二指腸など上部の消化器官で出血している場合、便に混ざった血が黒く変色して「タール便」と呼ばれる真っ黒なうんこになることがあります。
黒の水様便(type-7)
腹痛が数カ月続く、3カ月間で急激な体重減少、下痢と便秘を繰り返すなどの症状が一緒にある場合は、何か重大な病気のサインかも。なるべく早く医療機関に相談に行って、検査をしましょう。