若年層をゲット

実はNHKにとっては、「ニュース7」の個人視聴率が2倍になった以上に、若年層で注目されたことが大きい。

例えば、F1(女性20~34歳)で3倍弱、M1(男性20~34歳)で3.5倍と全体平均より大きく上がっていた。他に高校生や大学生、さらにZ世代(10代後半~20代後半)やコア層(男女13~49歳)でも軒並み2以上で、この日に限っては「ニュース7」が裏の民放全番組を上回った。

出典=スイッチメディア「TVAL」関東地区データから作成

例えばコア層だと、日テレ「有吉の壁」を約1%凌駕した。テレ朝「世界アニマル&キッズ動画スペシャル」からフジ「志村けん&ドリフの爆笑コント祭り」までには2倍の差をつけた。Z世代に限れば、NHKはテレ朝とフジに対して2倍以上の差をつけたことになる。

バラエティ番組は「暇つぶしや慰安のための番組」と言われることがある。それだけに一定程度の視聴率が見込めるが、大谷翔平のようなキラーコンテンツが登場すると、「積極的に見たい」と思われない番組はひとたまりもないようだ。

NHKは、日頃は若者に顧みられない。基本、必要とされていない。受信料制度の理解を得るためには、あらゆる世代に見られることが求められる。そんなNHKにとって、若年層で断トツとなったのはこの上ない喜びだったに違いない。

非難も轟轟

かように大谷効果は絶大だったが、マイナスの効果も忘れてはいけない。

局を代表するニュース番組に野球中継を入れたことで、非難轟轟の声も多かったからだ。SNSには批判ツイートが相次いだ。

「タンカー転覆で7人も亡くなってるのにMLB中継かよ」
「大谷選手は本当にすごいけど(中略)生活に関わるニュースより大事なんでしょうか」
「NHK! ニュースの役目を忘れてどうする?」
「さすがにやりすぎじゃないの」
「あほらし。もちろんチャンネル変えました」

今世紀に入って、NHKのニュースでは「国民の関心に応える」という選択基準が散見されるようになった。「多くの国民が知りたい・見たいを優先する」考え方で、これは視聴率をより重視するという方針とも読み取れる。