建設予定地の木の伐採をめぐりトラブルに
テスラはこれを今後、50万、そして100万台にまで増やしたい意向で、それを見込んで、現在、さらに100ヘクタール余りの拡張を計画している。専用の鉄道駅と巨大な物流センター、加えて従業員の子供の託児所の建設なども予定されているが、ただ、拡張については、近隣の住民や自然保護団体が反対していた。理由は、この地域が水源保護地域であるため、地下水の枯渇、あるいは汚染が懸念されること、そして、木の伐採などが挙げられている。
さらにこの状況下で何が起こったかというと、反対運動に極左の過激な活動家たちが参入してきた。80人から100人といわれる活動家は建設予定地に忍び込み、「テスラを止めろ!」のスローガンを抱えて伐採前の林を占拠した。伐採を妨害するため、木の上に小屋を作って立て篭もるのは、極左の活動家がよく使う手だ。警察が、放火事件と、この占拠組との関係を調べているという。
では、放火をしたのは誰だったのか? 事件の同日、“Vulkangruppe“という組織が犯行声明を出した。Vulkanとは火山で、Gruppeはグループなので、直訳すれば“火山グループ”。気候保護という名目で犯罪行為さえも正当化する過激派だ。
道路に張り付いて交通妨害をしたり、美術館で作品を汚したりという犯罪行為で有名になったラスト・ジェネレーションと通じるものがある。バイエルン州は、最近、州内で頻発していたインフラに対する一連の放火事件が、火山グループの仕業であったかどうか、捜査し直すと発表した。
イーロン・マスク氏は「極端にバカ」と大激怒
さて、火山グループの声明文によれば、目標はテスラのギガファクトリーの完全破壊だという。ただ、声明文の内容は、「テスラは、地球、資源、人間、労働力を食い尽くし、その代わりにSUVや、人殺しマシーンや、怪物トラックを吐き出す」とか、「エーレント・マスク(「エーレント」は、哀れ、惨め、卑しいなどという意味のドイツ語で、マスク氏の名前であるイーロンに掛けてある=筆者注)のようなテクノファシストたちを伐採することは、『家父長制からの解放』への一歩である」とか、私には意味不明の文章も多い。
ただ、犯罪行為を肯定していることは確かで、最終的にはラスト・ジェネレーションと同じく、体制の転換を目指しているようだ。ドイツには、共産主義革命を謳うこの手の組織が多くある。
一方、自分の工場を攻撃されたマスク氏ももちろん黙ってはいない。即日、Xに、「彼らは地球上で最も愚かなエコテロリストか、あるいは環境保護を望んでいない人たちの操り人形のどちらかだ。化石燃料車ではなく、電気自動車の生産を停止しようとは、極端にバカ」と投稿。最後の「極端にバカ」のところだけ、わざわざ「ist extrem dumm.」とドイツ語で書いてくれているところが可笑しい。