傷つくことを避けるよりも、修復力を大切にしよう
ここで重要なのが「人間関係はコミュニケーションの中でおたがいに傷つく可能性がある」ということです。
1度もケンカをしたことのない方もいると思いますが、長い付き合いの友人とは数回はケンカをしてきた方が多いのではないでしょうか。しかし、友人関係がつづいているのには理由があります。おたがいを許してきたからです。
人間関係で傷つくことは、残念ながら避けられません。どんなに関係の近い人でも、相手が考えていることや経験してきたことすべてを知ることはできないからです。そのため、傷つくことを完璧に避けることよりも、傷ついたあとに関係を修復する力が大切です。
たとえば、相手に家族が全員いる前提で話をしたとしましょう。でも、その相手は家族を亡くしていたとします。
悪意があったわけではないですし、相手の中でも気持ち的に終わったことかもしれません。それでもデリケートな話題に踏み込んだのであれば、ひと言謝るでしょう。
ケンカをしても好きな部分がのこっていれば、冷静さをとりもどしたあとで反省することができます。おたがい謝りあい、許すからもとの関係にもどれます。
新車に傷が付くのをこわがるように、人間関係の傷を恐れると気をつかいつづけることになります。気をつかったからといって、相手を傷つけないともかぎりません。
傷つくことを恐れるのではなく、関係性をもどす修復力に目を向けましょう。
断られることは否定ではない
「断られるのがこわくて、人を誘ったり一歩踏み出すことができないんです」というご相談を繊細な方からいただきます。
断られたことで、自分を否定されたと深く受け止めてしまうのです。「相手を悩ませてしまったのでは?」と、罪悪感を持ってしまう繊細な方もいらっしゃいます。
人生において、「断る」ことも「断られる」ことも数えきれないほど経験することです。早めに慣れておくと、人間関係がスムーズになります。
断られることは、否定ではありません。あなたも誘いやお願いを断った経験があるのではないでしょうか。そのときに相手を否定する気持ちで断ってはいませんよね。
「申し訳ないけど……」という気持ちで断っているかと思います。
では、なぜ断られることに否定的な気持ちを持っているのでしょうか。多くの場合、過去に断ったことで「イヤな気持ちになった経験」をしているためです。
たとえば、お願いを断ったときに「ケチ」と言う人がいます。あなたがケチくさいと言われないためには、お願いを引き受けるしかありません。良心的な気持ち・やさしい気持ちがあると、こうしたひと言を真に受けてしまいます。
このように断ったときに否定的なことを言われると、「たしかに私に落ち度もあるのかも………」と、繊細さ・敏感さを発揮して深く考えてしまう方もいるでしょう。
しかし、問題は相手にあるのです。
今の例のように「捨て台詞」を吐く方は、なにかしらの問題を抱えています。自信がなかったり、他人を利用したい、という気持ちを持っていたりします。
今回の場合は「期待外れだった」ため、ショックを受けているのです。「私はこんなにショックを受けた」と、捨て台詞で伝えているのですね。捨て台詞を吐く方のお願いは、断って正解です。むしろ、あなたはいい行動をとっていたのですね。