夫婦の間で、お互いを理解するための会話をするには、どうしたらいいのか。臨床心理士で公認心理師の諸富祥彦さんは「『聞く技術』がもっとも必要とされているのは、夫婦関係ではないか。妻の不満のワースト1は『夫が話をちゃんと聞いてくれない』ことだ」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、諸富祥彦『プロカウンセラーの こころの声を聞く技術 聞いてもらう技術』(SB新書)の一部を再編集したものです。

口論
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妻の不満ワースト1は「夫が話を聞いてくれない」

「聞く技術」がもっとも必要とされているのは、夫婦関係ではないでしょうか。長年カウンセリングを行う中で、夫に「もっと話を聞いてほしい」「もっとわかってほしい」という女性の切実な声を幾度となくお聞きしました。そこには必ず、絶望まじりのため息が伴っています。

夫婦は、育った環境も違えば、価値観も異なります。そんな2人が一緒に生活するのですから、わかりあえないことも多く、衝突することもあるのが当然です。パートナーとの関係を良好に保つには、2人で協力してお互いに話を「聞く・聞いてもらう」関係を築いていけることが理想です。

話をていねいに聞いてもらえると、「この人は私のことを、大切に思ってくれているのだな」と感じることができます。妻の不満のワースト1は「夫が話をちゃんと聞いてくれない」ことなのです。

「私はあなたのことを大切に思っています」と言いながら、こちらの話をまともには聞いてくれない人がいます。それでは、「本当に大切にしてくれている」とは思えないのが当たり前です。

ここで一つ、夫婦間のありがちな会話例を見てみましょう。

ケース1
「今日、子どもが宿題をやりたがらなくて大変だったのよ」
(スマホを見ながら)「ふーん」
「ふーん……って子どものことに関心がないのね⁉」
(スマホから目を上げて)「そんなことないよ」
「毎日、やりたくないが続いて、もう大変……」
「勉強が苦手なら塾にでも行かせるか」
「そんなこと言うけど、塾に行かせるのは誰の役目よ。私だって、忙しいのよ!」

解決策を示したのにキレられた理由

ケース1では、夫は「勉強が苦手なら塾にでも行かせるか」と、妻が大変だとこぼすことへの改善策としてアドバイスを行っています。ところが、妻からキレられてしまいました。

夫としては、何か解決策を示せれば、とよかれと思って提案したのになぜでしょう?

話を聞いてもらっている側からしてみれば、アドバイスされるのは多くの場合、余計なお世話です。話を聞いてすぐにアドバイスされると、されたほうが「私の話、聞く気ないんだ。面倒くさいんだ」と感じてしまいます。また、「上から目線でものを言われた」「マウントされた」と感じることもあります。

「そのアドバイスを実行しないうちは、不十分だと言われた」

そんな気持ちになってしまうのです。