いずれにせよ、トランプ氏がもし選挙に勝ったとしても、大統領に就任するのは1年近く後のことだ。現在のガザ危機が1年後にどのような展開を見せているのか、予測することは非常に難しい。トランプ氏はそのこともふまえたうえで、1年後の自分の行動を縛り付けるような発言は控えているとも言える。
だがそれにしても、いくつかのカギはあるかもしれない。トランプ第2次政権発足後の外交政策の可能性を、中東情勢の観点から考えてみることは、その他の領域について考える際のヒントも提供する意味があるだろう。
追い求めるのはアメリカの「直近の利益」
トランプ氏の政策の基本スタンスは、「アメリカ・ファースト」である。これは内政面においてだけでなく、外交政策においても同じだ。アメリカの利益になる外交関係を追求し、そうではないものを忌避する。
ポイントは、追求する利益が、わかりやすい直近の利益でなければいけないということである。多国間主義や自由貿易の追求は、長期的な観点からはアメリカの利益になる、といった議論は、トランプ氏の関心対象ではない。
この点をふまえてトランプ氏の中東へのまなざしを見てみよう。トランプ氏は、イスラエルを擁護する立場は、アメリカの直近の利益になる、と考えているようである。経済的な視点もあるかもしれないが、安全保障面から見た場合でも、中東における反米勢力の台頭を封じ込めるための最強のカードがイスラエルだ、ということだろう。したがってハマスを撲滅しようとするイスラエルの政策に、トランプ氏が躊躇をする可能性は乏しい。
ガザの一般市民や、パレスチナ問題に対する関心によって、第2次トランプ政権の政策が左右される可能性は乏しい。シェール革命を果たしたアメリカにとって、エネルギー問題への関心で産油国に気遣いをしなければならない理由も乏しい。