「温かいアプローチ」だけでは効かないケース

しかし、温かいアプローチだけですべての部下の意識や行動や成果が「求められる水準まで、求められる期間内に」変わるかというと、難しいと言わざるを得ないでしょう。特に、1年間ずっと、または2期連続や数年間も成果が上がらない状態(ローパフォーマンス)が続いている「ローパフォーマー」と言われる部下を、「温かいアプローチ」一辺倒で変えるのは簡単ではありません。

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企業の状況や業績がひっ迫し、一定期間で結果を求められ、改善しない場合は降格、降給、退職勧奨などの危険が迫っているときは、温かいアプローチでは間に合わないケースも往々にしてあります。

ローパフォーマーの意識や行動に改善を促すには、温かい太陽だけでなく、ときには厳しい北風を吹かせることも必要です。ただし、問題は北風の吹かせ方。北風の吹かせ方として多いのは、改善が必要な意識や行動を指摘する、わかりやすく言えば「叱る」という方法です。上司の感情をぶつけるだけの「怒る」よりは効果的です。

感情的な反発を招いては台無しに

しかし、上司が一方的に叱ってすぐに変わるのはミスや事故につながる顕在行動くらいで、ローパフォーマンスの根本原因となっている意識や行動の変化はあまり期待できません。なぜなら、叱るという行為は、ほとんどのケースで「心理的リアクタンス」と呼ばれる自由の制約に伴う感情的な反発を招くためです。

「その進め方は間違っている」「言ったとおりにしなさい」「もっと仕事に責任感を持って欲しい」……。上司としては業務を上手く遂行してもらうための指摘のつもりでも、部下の立場から見れば「一方的に押し付けられた」「自由を制限された」と感じてしまいます。結果として、一方通行のコミュニケーションになってしまい、耳が痛い話をされた部下は、表面では異を唱えなかったとしても、内心では反発します。反発した状態で働いても継続的なパフォーマンス発揮は困難です。