※本稿は、難波猛『ネガティブフィードバック 「言いにくいこと」を相手にきちんと伝える技術』(アスコム)の一部を再編集したものです。
「耳の痛い話」をどう伝えればいいのか
「上司が部下に厳しいことを言えるようにしていただけませんか?」「うちの社員に、厳しいことを言ってもらえませんか?」という相談が、人事コンサルタントをしている中で急増しています。以前は、「上司が部下に厳しく言い過ぎないように」「うちの社員のやる気をあげてもらえませんか?」という相談が多かったので、真逆の依頼です。
昔は、多くの職場で「熱すぎる上(行き過ぎるとパワハラ上司)」が多かったですが、現在はパワハラ防止や離職防止などを気にして「優しすぎる上司(行き過ぎると何も言えない上司)」が増えていて、企業の経営者や人事は問題意識を持っているケースが相談に繋がっています。
厳しいこととは、部下にとっては耳の痛い話であり、いくら上司の言葉とはいえ「はい、わかりました」とは簡単に受け止められないことも多いです。下記は、クライアントから相談を受ける具体的な耳が痛い話です。
「会社が期待している成果と、本人の出している成果に大きな開きがあることを認識してもらいたい」
「時代の変化に応じて業務の進め方も自律的に変えていく必要があるが、ベテランが今までのやり方に固執して変化対応しようとしない。今後はそれでは困りますと伝えたい」
「会社の期待と若手の価値観がズレているが、それを強く伝えると辞めてしまう可能性があり伝えにくい」
「会社の方向性に基づいた能力を獲得していかないと、組織の中で活躍できる場所がなくなることを伝えないといけない」
「事業構造改革により部署がなくなることに伴い、慣れ親しんだ職場や職務から配置転換になることを伝えないといけない」
「従来のように会社が適材適所を考えて配置するメンバーシップ型から、本人が自分の適所を獲得して成果貢献するジョブ型に切り替えていく中で、キャリアを自律的に考えてもらう必要性がなかなか伝わらない」
「人事制度が改訂されてメリハリ重視になる中、今のポジションには見合わない能力と成果が続くと、ポジションが降格することもあるし、給料が下がることもあると伝えないといけない」……