「世界からの押し返し」を経験させるべき

留意すべきなのは、こうした「思い通りにならないことへの不快」は外と内の両方に向けられ得るということです。

藪下遊、髙坂康雅『「叱らない」が子どもを苦しめる』(ちくまプリマー新書)

外に向かう場合は、「こんなうるさい場所には居たくない」「担任が言うことを聞いてくれない」などのように外界が思い通りにならないことへの不快として表現されます。内に向かう場合は、「自分自身が思い描いた姿でいられないことが不快」という形で表出します。理想通りの姿でいられないことが大きな不快と感じられ、そんな不快が生じる可能性のある状況からの回避という結果になるのです。

もちろん、生育歴の中で「世界からの押し返し」の経験が少ない子どもであっても、学校という「思い通りにならない場所」での体験を通して成長し、それなりに学校環境に適応していく場合がほとんどではあります。

しかし、一部の不登校をはじめとした学校での不適応は、こうした「世界からの押し返し」が少ないために生じている可能性があるのです。

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