安宅さんの場合
1カ月程度のプロジェクトの場合、本番の2、3日前にはアウトプットができているほうがいいと思います。私なら、アウトプットの見立てがほぼ完成した時点で、副社長や常務などのキーパーソンに説明に行きます。
「こういう検討をして、肝になる論点はこれとこれで、このあたりが落としどころ」と、カギになる個所を説明する。資料を全部見せてもいいのですが、そこまでする必要はないでしょう。
キーパーソンに事前に話を通しておくことで、「じつは社長肝入りのこんな話があって、わが社の悲願なんだけど、なかなかうまくやれなくてね。そのあたりを汲んで話したほうがいいのでは」などと、思いもよらない情報がもたらされることがある。必ずしも論理的とは限らないのですが、その企業特有の思いがあって、それを乗り越えなければ決断に至らないポイントもあるもの。そういった情報や視点は、内部の人からしか出てきません。
2、3日前からはリハーサルを始めたほうがいいでしょう。できれば、頭が切れて当該プロジェクトのことを知らない人に聞いてもらい、厳しい質問をしてもらうのがお勧めです。私も重要なプレゼンの場合には、CEO役やCFO役を割り振って、ロールプレーイング形式でリハーサルをやることもあります。
リハーサルの結果次第で、プレゼンの流れを軌道修正する必要も出てきます。ただし、ここでやっていいのは、論理の組み替えではなく、ストーリーの最適化です。リハーサルを経て足りない点が出てきたとしても、半日や1日あれば、まだできることは十分あります。
1976年生まれ。東京大学法学部卒。大学在学中に司法試験に合格。BCG、リップルウッドHDを経て、ハーバード経営大学院に留学。上位5%の優秀な成績を収める。卒業後、準備会社の設立に参画し、副社長に。近著は、『 132億円集めたビジネスプラン』。
ヤフー執行役員 事業戦略統括本部長 安宅和人(あたか・かずと)
修士号取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。4年半の勤務後、イェール大学脳神経科学プログラムに入学し、Ph.D取得。2008年ヤフーCOO室室長、12年3月より現職。経営課題・提案案件の推進に関わる。著書に『イシューからはじめよ』。