「ゴルフやること自体、向いてなかった」

プロになりたくて、プロテストを受けていたわけじゃない。だから、その期間に落ちた回数をカウントされるのは不本意だという。

「あの時期も入れてくるのかと(笑)。一般的に見たら、プロテスト受ける人は皆プロになりたいんだろうと思われるから、仕方ないんですけど。私はそうじゃないので、複雑な気持ちです」

しかし、そこまで嫌だったゴルフを続けてきたのはなぜだろうか。

「自分の意志がなかったというか。ゴルフをやめたら、父親に怒られると思って。子供ってそういうものじゃないですか? だから、もともとは始めたときから、だいぶゴルフが嫌いでした。

ゴルフは下手だったし、勝負事も好きじゃない。ゴルフやること自体、向いてなかったんですけど、そのときはやらなきゃいけない状況に置かれていて、やるからにはなんとかしなきゃいけなかった」

しかし、笹原のプレー振りを見ていると、少なくともゴルフが嫌いな人間のプレーには見えない。一打一打ひたむきにプレーし、最後まで粘り強く戦う。笑顔も見せるが、戦いの厳しさを感じるような精悍せいかんな表情を見せる。

「親にやらされてきたという拒否反応で、ゴルフを好きになりたくないという気持ちがずっと強かったですね。趣味としてゴルフをやってきたわけでもないので、アマチュアの人がゴルフが好きというのもそもそもよくわからなかったので。

でも、今は結果を出すために、好きになる努力をしています。心からゴルフを好きになりたいと思いながら取り組んでいるところです」

筆者撮影

教え子に「スコアは人間性」と説く理由

笹原が和田の指導を受けるようになったのは、高校一年生からだ。

和田がジュニア選手の指導において掲げるテーマは、「スコアは人間性」というものだ。目標に向かって、努力することが出来るのか、自分の弱さと向き合える強さがあるのかなど、良いスコアを出すためには、人間として成長していかなければならないという考え方だった。

「だって、そうしないと。誰もがプロになれるわけではないので」と和田は言う。

プロゴルファーになって、華やかなツアーの世界で活躍するという夢を抱くのはいい。しかし、それを実現できるのは、言うまでもなくほんの一握りの選手に限られる。

ゴルフを通して自分を高めて、有意義な人生につなげてもらいたい、そんな想いからの「スコアは人間性」という言葉だった。

「笹原に限ったことではないですが、以前は選手の夢に寄り添っていきたいと考えていました。今は現実はこれだけ厳しいよ、全てを捧げても無理かもしれないよ、それでも出来る? と聞きながら、コーチングを行っています。商売にしたくないんです、人の夢を」