事実婚も「社会に認められる関係」に
石沢さん夫婦は結婚時に2人の関係性を証明する公正証書を作成。その後、勤務地の盛岡市が2023年にパートナーシップ・ファミリーシップ制度を導入したのを機に、この制度を利用した。
盛岡市は東北で初めて、事実婚の異性カップルにも制度の利用を認めている。そのこと自体を「画期的」と捉えて、石沢さん夫婦は異性同士として初めての制度利用者になったことを河北新報の紙面で明らかにしている。制度の利用によって、「2人の間だけで交わされていた契約が、社会に認められる関係に広がったようだった」と書いている。
東京都内では残念ながら事実婚までパートナーシップ制度を適用している自治体は、墨田区や国立市、武蔵野市などまだ少ない。民間の保険やペアローンなどパートナーシップ証明書があれば使えるサービスもある。
若い世代の「結婚したい」を後押しする方法
今回、事実婚を選択した宮沢氷魚さんはインタビューで、自身の母親が「バイレイシャル」で幼少期はいわゆるクォーターとして、さまざまな葛藤を抱えていたことを告白している。
自身のアイデンティティに悩み模索し続けた宮沢さんだからこそ、結婚とは何かと問い続けて出した答えが事実婚だったのではないかと思う。
法律婚であろうと事実婚であろうと、多様な家族の形を認めることは、少なくとも若い世代の「結婚したい」という思いを後押しこそすれ、忌避する方向には働かないだろう。法律婚という形に疑問を持っている人たちが、なんらかの形でパートナーであることを証明できる手段を整備すれば、もっと結婚を前向きに考える人も増えるのではないか。