「県は知事だという意味で、知事の発言が公式見解だ」

昨年12月26日の記者会見で、「『部分開業』は知事自身の主張ではなく、県の公式見解という認識か」という質問が出された。

川勝知事は、従来の「部分開業」論の主張を繰り返した後、「2027年開業前に実験線の延伸完成がある。事業計画に書かれていることを基に県職員も公式見解だと(述べた)」とやはり論点を外してしまった。

その後知事に代わり、県議会委員会で「公式見解」発言をした渡邉参事が「記者会見ではなく、議会で知事が答弁した『リニア問題の解決策は部分開業である』は、政治家ではなくて執行機関の知事としての発言だと理解している」などと何ともわかりにくい説明をした。

筆者撮影
「部分開業」が県の公式見解だと説明する渡邉参事(静岡県庁)

このため、再度の説明が渡邉参事に求められた。

渡邉参事は「知事は執行機関であり、あくまでも私は補助機関である。知事を補助する機関なので、いわゆる県は知事であるという意味で、公式見解であるというのが知事の答えである。あくまでも地方自治法の考えだと理解してもらいたい」とわかりにくい回答を繰り返した。

コンプライアンスに背く行為ではないか

JR東海は渡邉参事をはじめ県幹部に一連の事実関係を正確に伝え、川勝知事に説明してもらえるよう要請してきた。

渡邉参事も知事の「部分開業」論がデタラメであることを承知していたはずだ。それにもかかわらず、一職員が勝手に「県の公式見解」としてしまった理由を「知事の議会での答弁だから」と釈明したのである。

つまり、県庁組織の中では、知事の意向であれば、黒を白と言い、白を黒と言うことができるというわけだ。

ただこれではコンプライアンス(法令遵守)に背くことになってしまう。地方公務員法32条(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)、33条(信用失墜行為の禁止)に違反する疑いが強い。

知事発言に間違いがあるならば、渡邉参事は事実を進言した上で、県議会に訂正を要請する手続きを踏むべきである。

知事発言の間違いを承知しながらも、担当職員がリニア議論を続けることはあまりにも危険である。

だから、リニア問題は解決の糸口さえつかめないのだ。