「ボラティリティ」にどう対応するか

英エコノミスト誌は昨年11月、「2024年の世界」という特集記事で、「トランプ氏が2024年の世界における最大の危険性になる」と予想した。

トランプ氏の危険性は、言動の予測不可能性にある。金融の用語に言い換えれば、「ボラティリティ(変動率)」が高いのだ。

例えば中国の習近平主席、ロシアのプーチン大統領などから見ても、トランプ氏の予測不可能性は相当に厄介だろう。

バイデン政権は、人権重視や多様性重視の観点から、新疆ウイグル自治区の人権問題などは無視できない。一方、トランプ氏はバイデン氏と比較するとあまり問題視しないから、人権問題に関しては、習主席はむしろ歓迎するだろう。反ESGや反WOKEは中国をより利することになる。

中国がフィリピンやベトナムとの間で問題を起こしても、トランプ政権は厳しい対応をしなかった。バイデン政権が常にウオッチしてきたのとは対照的だ。

軍事戦略においては、敵の行動が予測困難なことは脅威となる。ボラティリティが大きいのは大きな武器なのだ。したがって、バイデン大統領のほうが、仮に敵対しても戦いやすい相手となる。トランプ氏のように、敵の大将がどう動くかわからないのは困るのだ。

トランプ氏の危険性は、言動の予測不可能性にある(写真=Gage Skidmore from Peoria/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

トランプ再選は、各国の政治にも影響が出る。第1期トランプ政権では、欧州で極右と見られる党首や政治家が増え、勢力を強めた。バイデン政権になってからは下火だが、トランプ再選によって再び活発化し、極右連合のような動きが出てくるかもしれない。プーチン大統領も、心情的には極右連合に加わっている。

日本の政治家は、第1期政権では、当時の安倍晋三首相がトランプ大統領と良好な関係を築くことができた。トランプ氏は属人的な考えが強く、1対1の関係を結べる相手と深く付き合うところがある。彼の考え方に理解と共感を示せる政治家でなければ、良好な関係を築くのは難しいだろう。

トランプ再選は、日本にとっても大きなリスクになりうる。11月5日の本選まで目が離せない状況だ。

(構成=伊田欣司)
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