「減塩」の効果も

道添氏は、SNSや動画配信などでファンと交流を深めていると、うまみ調味料の使用法について相談されることも多いという。

「私が『どうして使わないのですか?』と逆に質問すると、『何となく』と答える方が少なくありません。かなりの方がイメージに引きずられているようです。中には『味の素は使いませんが、コンソメは使います』と教えてくれる方もいます。コンソメには味の素の主成分であるグルタミン酸ナトリウムが配合されているのに、です」

道添氏は、料理の専門家として、公的団体が主催するうま味や減塩に関する勉強会や、うま味調味料を活用した減塩プロジェクトでの専門家によるレクチャーなどに参加して改めて「うま味」を研究し直したという。

「現代では塩分の過剰摂取が社会的な問題になっています。WHOでは、成人の1日あたりの塩分摂取目安量を5gに設定していますが、日本では成人1日あたり約10g程度を摂取していると言われています。実はこの減塩にうま味調味料が役に立ちます。1グラムのうま味調味料には、約0・3グラムの食塩相当量が含まれています。つまり1グラムの食塩の代わりに、うま味調味料を1グラム使えば、食塩を約0・7グラム減らせることになります。しかも塩味が薄くなった分の物足りなさをうま味が補ってくれるので、本当においしく減塩ができるのです」

現代は共働き世帯も多い。料理に割ける時間も減っている。道添氏は「そういう時代に、うま味調味料を活用しない手はありません」と言う。

「時間の余裕がある日は自分でしっかり出汁を取り、忙しい日にはうま味調味料を活用するというスタイルでもいいと思います。例えば新婚夫婦で、外食ばかりだったパートナーは知らず知らずのうちに塩分過多の味に慣れています。そうした相手にこそ控えめにした塩分のおいしさを『うま味』で補って欲しいのです。手軽にパッと加えられるうま味調味料を素材の下味付けや最後の隠し味に使うと、パートナーは『おいしい』と喜んでくれるはずです」(道添氏)

湯木氏は著書で「どんな料理にもふりこむ」ことは諫めながらも、「絶対に使わないというのも、行き過ぎでしょう」と指摘している。これこそ納得できる一言であり、道添氏の姿勢とも重なっている。

(井荻稔)