夫は激怒し「離婚しよう」

しかし、探偵の報告書を突きつけると、A子さんの予想に反して、夫は激怒しました。「元々お前のことは嫌いだった。ろくに家事もしないし、自分へのねぎらいがない。離婚しよう」。

謝られることと慰謝料をもらうことしか考えていなかったA子さんは、夫に不倫を認めるように言いましたが、夫は報告書を見ることすらせず、その日からA子さんを無視するようになりました。

納得のいかないA子さんは夫に毎日LINEで「不倫は許しません」「不倫相手を訴える」「慰謝料800万円と探偵費用400万を支払ってください、マンションの名義も変更してください」などと送りました。

夫と会話がないまま2週間が経ったある日、夫が家に帰ってこなくなりました。LINEで連絡したところ、夫は4万円を振り込んできたので、これは何のお金かと聞くと、「別居しよう。4万円は生活費だから」という返事が来ました。

こんな金額では到底暮らせないので、法的手段に出るしかないと思い、A子さんは弁護士に相談に行きました。

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慰謝料は100万~200万円

「夫と不倫相手に慰謝料と探偵費用を請求して離婚したいです。あとマンションももらって……」という希望を話すと、弁護士はA子さん夫妻の収入や財産について聞き、現実的なお金の見通しを教えてくれました。

まず、慰謝料は裁判になっても100万~200万円で、探偵の費用の全額請求はできません。

離婚するなら、慰謝料の他に財産分与をもらえますが、A子さん夫妻の場合、購入したばかりの夫名義のマンションのローンが残っているため、夫の財産はマイナスになり、財産分与は見込めないということでした。

離婚しない場合は、別居中の生活費として婚姻費用がもらえます。

婚姻費用は夫婦の収入と子どもの有無で算定されます。夫は年収700万円、A子さんはパートをしていて年収120万円、子どもはなし。この場合、夫がA子さんに支払う婚姻費用は月に約9万6000円になります。夫がマンションのローンを払っていることを加味すると(居住関係費といいます)、A子さんがもらえる婚姻費用の適正額は約3万8000円。夫が4万円を振り込んできたのは適正額になるということでした。

このように、A子さんが思い描いていたような「多額の慰謝料やマンションをもらって離婚」という結果にはならないことがわかりました。

A子さんは諦めきれず、「夫の両親に請求できないのか」と聞きましたが、それも難しいと言われました。