「毛がなくなるのが先か、銀座カラーが潰れるのが先か」
多くの破綻例ではこのように、以前からの会員にはサービス内容の改悪をきっかけに経営の行き詰まりを感じさせる予兆が見られる場合があります。そのためなるべく早く前受分のサービスを受けようとするのです。ただお店側はそれではキャッシュが入ってこないため、経営が行き詰まってくると徐々に以前のようにはサービスが受けられなくなるようにさらにルール変更をせざるをえなくなってきます。
また施術の様子も聞くと、銀座カラーのさらなる苦しい経営実態が垣間見えてきました。
プラン上は回数無制限で全身脱毛ができるはずなのに、ある程度回数を重ねた段階で施術スタッフから「この部位は毛がほとんどないので、お手入れを省略させていただきますね」と言われるケースがあったそうです。全身を施術していたときは1時間をゆうに超えていたけれど、毛の少ない手の指や足の甲、腹部などの脱毛を除外された結果1時間以内に済ますような対応になり、本当にしっかり施術されているのか不安に感じたといいます。
結局、2年弱通っても施術は10回を超えた程度で、「毛が完全になくなるのが先か、銀座カラーが潰れるのが先か」という冗談めいた話を紹介してくれた友人会員とするほどだったそうです。
現場は経営悪化を知らされていないケースが多い
破綻する前金ビジネスの現場では、破綻当日までそれを知らされていないというケースが大半のようです。給与が遅配したり、労働環境が悪くなったりと、薄々は会社が苦しいのは知っていても、まさか倒産するとは思っていなかったというケースになるのです。
これは経営と運営が役割として分離しているために起きる現象です。銀座カラーを展開するエム・シーネットワークスジャパンの場合、コロナ禍の2021年4月期に債務超過に陥り、22年、23年と累積赤字を重ねて最終的に債務超過は65億円、社会保険料の滞納は8億円に達したと報道されています。
経営側は店舗閉鎖や経営者一族の私財提供を含め資金繰りに必死となり、銀行や取引先はその経営悪化情報から取引に慎重になるのですが、店舗の現場にはその細部の実情は共有されることはありません。会社が危ないという風評が現場でたてば、一気に経営が傾くからです。
経営としては資金繰り目的で「お年玉キャンペーン」「バレンタインデーキャンペーン」などと、さらにお得な期間限定キャンペーンを企画するのですが、現場はそれが資金繰り目的だとはわからないので「今は特にお得ですよ」と新規の顧客に勧めてしまうのです。その果てに突然、経営破綻を知らされ、自分の給与が払われるのかどうかもわからないまま、会員からの苦情に対応することになるわけです。