意思決定の選択肢として「経済学」が必要

まず、多くの米国企業のように、社内に経済学者がいる状況は、それだけビジネス課題に取り組む際の選択肢が増えることを意味します。

近年、ビジネスパーソンが直面する課題は、ますます多層化・複雑化しています。

そうした課題に取り組むにあたっては、多様な立場・視点からの意見が求められることから、ダイバーシティ・インクルージョンが企業にとっての喫緊の課題となっているわけです(残念ながら、中にはこの課題を自分事化できていなかったり、対処できていなかったりする企業も多いですが)。

米国企業において、経済学者の視点は、この「多様な立場・視点」の一角をなすものです。様々な立場や視点の人たちが、それぞれの専門的見地から課題解決法を検討するなかに、ごく自然に経済学者も存在している。経済学者たちは経済学者たちで、経済学の理論や手法をもって課題解決の方策を探っている。そしてときには経済学的アプローチが課題にフィットすることもあれば、まったく別のアプローチが課題にフィットすることもある。このように、チームの一員として経済学者が関与することで、選択肢の幅を広げておくことができるわけです。

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「経済学」ほどビジネスになじむ学問はない

次に、経済学の学問上の特性もまた、日米の経済成長の差として考えられます。

経済学というと、難解な数式や理論がたくさん出てくるイメージがあるかもしれません。しかし、経済学は決して机上の空論ではなく、その視線は常に「社会」に注がれています。経済活動という社会的な営為を分解し、理解に努めるのが経済学です。

自社目線や、ケーススタディを基に利益を上げる方法を考えるのが「経営学」だとしたら、より広い社会目線で、理論をベースに利益を上げる方法を考えるのが「経済学」です。

今後、ますます社会が多様化・複雑化していくことを鑑みれば、経済学の持つ「社会目線でビジネスを考える」という観点には、「多様な立場・視点のうちの1つ」以上の価値があるのではないでしょうか。

そもそもビジネスとは、企業あるいは個人が社会とつながり、ある価値を提供し、対価を得るという社会的行為です。ならば、社会を対象とする経済学をビジネスに活用しようというのは、ごく自然な発想といえるでしょう。

経済学ほどビジネスになじむ学問はないといっても過言ではありません。