大学間の“移籍”は活発化するのか
2020年、実業団陸上連合が公正取引委員会から「独占禁止法違反の恐れがある」と指摘を受けたのを契機に、実業団チームの「移籍」が大幅に増加している。それまでは「円満退社」が認められないと、他チームで実業団駅伝に出場できなかった。それが選手、移籍元、移籍先の3者で移籍協議合意書を取り交わせば移籍が可能になったのだ。
一方、大学間の“移籍”はほとんどなかった。しかし、吉田の活躍でこの流れが変わるかもしれない。
筆者はこれまでの取材で、監督の指導法、チーム方針や部の雰囲気に馴染めず、退部を余儀なくされた有力選手を何人も見てきた。彼らの多くは転校がかなわず、そうなると実業団チームに入るのも簡単ではない。競技を続ける意思があっても、新天地を見つけるのは非常に困難だった。
賛否はあるが、個人的には大学やチームにフィットしない場合の転校はポジティブにとらえている。どんな偉大な選手でも加齢には勝てない。人間が“速く走れる期間”は限られており、選手たちの才能や夢を無駄にしてほしくないからだ。
吉田は出雲駅伝の後にこう語った言葉が強く印象に残っている。
「自分は陸上を続けるかわからない状況でしたけど、今回、出雲駅伝に出場して、仲間と一緒に喜びを味わうことができました。いろんな思いがあふれてきて、駅伝を走るのって、こんなに楽しいんだなと感じたんです。創価大に来て、このチームで駅伝をやれることがすごく幸せだなと思いました。東海大にも大切な後輩がいるので、箱根駅伝ではともに頑張りたいです」
第100回大会の箱根駅伝。転入生が新たなドラマをつくる。