創価大への転入と今季の大活躍
退部の理由について吉田は多くを語ることはないが、チームメイトと意識の差があったという。
「純粋に強くなりたい」という思いを持つ吉田はいつしか浮いた存在になっていたのかもしれない。失意のなかで同じ静岡県出身の創価大・瀬上雄然スカウト編成部長から声をかけられ、新たな人生が幕を開ける。
吉田は悩みながらも競技続行を決意。創価大駅伝部の一員になった。体育学部から経済学部への編入で、認められない単位も少なくなかったが、「山の神」という目標に向けて努力を重ねてきた。
今季は大きな故障もなく、トレーニングを継続。8月の月間走行距離はチームナンバー1となる1061kmに到達した。そして駅伝シーズンで快走を連発する。
10月の出雲駅伝(島根県)は向かい風の強さを買われて5区に登場。前年と異なり、追い風になったが、吉田は速かった。「楽しくて舞い上がりすぎました」と軽やかな走りで、突き進んでいく。区間記録に2秒差と迫る好タイムで区間賞を獲得した。
「創価大に編入したことで、さまざまな意見を聞きました。今回、区間賞を取れて、応援してくださる方々に恩返しができたのかなと思います。ただ個人としては区間新を目標にしていたので、そこはすごく悔しいです。少しでも前との差を詰めて凌に渡そうと思って走りました」
吉田の活躍もあり、創価大は準優勝に輝いた。
11月の全日本大学駅伝(愛知県・熱田神宮→三重県・伊勢神宮)も5区で爆走する。区間記録を29秒も更新すると、区間2位に38秒差をつける圧倒的な区間トップで突っ走ったのだ。13位から9位まで順位を押し上げた。
「区間新記録をターゲットにしていました。抑えたつもりだったんですけど、けっこう調子もよくて、5kmは予定(14分15秒)より10秒くらい速く入ったんです。ゲームチェンジャーの役割を期待されていたので、設定タイムより速く走れてホッとしています」
吉田の活躍もあり、最終的にチームは6位でフィニッシュ。箱根駅伝に向けても、大きな盛り上がりを見せている。
「箱根駅伝も5区で区間記録(1時間10分04秒)を塗り替えて、学生駅伝の区間賞を総なめできるように頑張っていきたいです。できれば1時間08分45秒ぐらいは出したいですね」
吉田が目指すタイムは「山の神」と呼ばれた順天堂大・今井正人(現・トヨタ自動車九州)が現行に近いコースで叩き出した1時間9分12秒を上回るもの。“今井超え”を果たせば、「山の神」と崇められるだろう。