結果よければすべてよしの哲学「プラグマティズム」

デューイ自身は、自らの哲学をプラグマティズムと呼んでいるわけではありませんが、チャールズ・サンダース・パース、ウィリアム・ジェームズ、デューイはプラグマティズムの御三家とされています。プラグマティズムは日本語では「実際主義」「実用主義」などと訳され、まず「実践」によって真理を獲得しようという考え方です。

ジェームズはパースの考え方(観念は結果でわかる)を発展させ、人生において実際的に効果をもったものであるならば、それは真理であると考えました。つまり、結果がよければ、それが真理ということになります。そしてデューイは、パースとジェイムズ、またダーウィンらの影響を受けて、さらにこの考え方を発展させました。

デューイは、「思考」は、環境をコントロールするための道具であるとします。この考え方は、具体的には次の5段階で説明されています。

(1)まず、疑念が生まれる問題状況が生じます。(2)そこで問題の設定を行い、(3)次に問題を解決するための仮説の提示をします。(4)そして、推論による仮説の再構成を行い、(5)実験と観察による仮説の検証を行うのです。

彼は、このような立場を道具主義(instrumentalism)と名づけました。思考はひとつのツールですから、それを使ってみて効果があれば続ければいいし、もし問題が生じればその古い考え方を捨て、新しい考え方を適用すればよいわけです。

哲学に基づいて教育の画一性も批判した

デューイは、「哲学者は、社会で承認された多様な価値や理想を、それらの結果に照らして吟味するべきだ」と考えました。対立の解決を試み、新しい可能性への道を示すことを主張したのです。

富増章成『21世紀を生きる現代人のための哲学入門2.0 現代人の抱えるモヤモヤ、もしも哲学者にディベートでぶつけたらどうなる?』(Gakken)

デューイはこのような考え方を教育にもあてはめます。彼は、教育の画一性を批判しつつ、子どもたちの成長と活動に重点をおくべきとし、人間の自発性を重視しました。デューイによれば学校は「小型の社会」であり、授業のなかでは「問題解決学習」を行って、多様な価値観をもつことが望ましいと考えたのです。なお彼の教育観では、ディベートも勧められていたようです。

プラグマティズムの考え方は、現在にも広がっています。パース、ジェームズ、デューイらの古典的なプラグマティズムを経た後、20世紀初頭から中ごろにかけては新しいプラグマティズムが提唱され、これらはネオ・プラグマティズムと呼ばれています。そして現代にいたるまで、リチャード・ローティらさまざまなアメリカの哲学者によって、拡大し続けているのです。プラグマティズムに興味をもった方はぜひ、生活に取り入れてみてください。

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