まるでロボットと話しているみたいだった

返す言葉がなかった。言っていることはもっともだし、コミュニケーションとしては面白い。けれどこんな雰囲気ではとても恋愛にはならないだろう。いやむしろ最初からこの人は私を恋愛対象に見ていないから、こう言われてしまうのかもしれない。「勉強になります。ありがとうございました」とだけ返した。

その後、事務職、介護職、建築業、プログラマー……などの男性たちとトークタイム。この日は婚姻歴のない、50歳前後の男性が半数以上だった。皆、年収は高めで、見た目も普通なのに一度も結婚したことがない――それは女性に対するコミュニケーションの苦手さに現れているように感じる。話していると、彼らの緊張感がこちらにも伝わってくるのだ。

例えばプログラマーの男性に「どんなお仕事されているんですか?」と聞くと、「はい、わかりました。ある企業のシステムのプログラムをする仕事で……」という返事が。さらに「どんなところが楽しいんですか?」と尋ねれば、「はい、わかりました。人の知らないところが開拓できるところです」といった具合で、まるでロボットと話しているみたいだった。

また介護職の男性は手にするアルコールが「5杯目」と言っていた。それだけ飲まないと女性と話せないらしい。

女性として見られていない空気を感じた

コミュニーケーションがスムーズだったのは、最初のホスト風会社経営者と、最後から2番目の篤さん。年は48歳で、国家公務員という職種をわかりやすく話してくれた。両親と兄は医師というだけあり、育ちが良さそうな、物腰のやわからかい穏やかな雰囲気の人だ。一度婚姻歴があり、離れて暮らす2人の子どもがいるというのも納得できる。

「ひろこさんはどれくらいのペースで締め切りがあるのですか」

篤さんに聞かれた。多いと週に3本4本とあるけれども、書く内容や量によって一つの締め切りの重さが違うと答えると、

「では結構大変だなという原稿を書き終えて、どれくらいの休みがとれるんですか」「いつ頃から書くことが好きだったんですか」などと通り一辺倒でない、私の立場を理解しようとする質問をしてくれた。すてきな人だなと感じる。

そして最後にスポーツの話になった。ゴルフをしたことがあるか? と聞かれて首を横にふると、彼は身を乗り出して言う。

写真=iStock.com/Wand_Prapan
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「ゴルフは健康にもいいですし、お付き合いの幅が広がりますよ。ゴルフを通じて政治家、弁護士、医師などとも知り合いになれます。お忙しいと思いますが、取材の幅が広がるので一度されてみてはいかがかと思います」

決して〝一緒に〟とは言わない。私の秘書かと思うくらいドライな口調だった。そして「あ、時間ですね。ありがとうございました」と、颯爽と立ち去る。女性として見られていない空気を感じた。