「俺は恋愛に慣れている」と言いたげな態度
8人全員と話して、再び私の目の前には最初のホスト風経営者・知広さんが座る。受付の男性が会場を見渡しながらマイクで説明する。
「それでは『いいね!』タイムです。人数制限はありませんので、もう少し話したいと思う異性にボタンを押しましょう」
私はスマホで男性のプロフィールを見ながら悩んでいた。もう一度話したいと思うのは、国家公務員の篤さんと、目の前の知広さんだ。でも、トークタイムの態度から自分は恋愛対象でない気がしてやはり踏み出せない。顔を上げたら、そんな知広さんと目が合った。
「いい人、いました?」
と、尋ねられる。知広さんの〝俺は恋愛に慣れている〟とでも言いたげな余裕の態度に悔しくなり、「いました?」と私はそのまま尋ね返した。
「いたり、いなかったり」
とニヤリ。普通、そういったことを目の前の女性に言うだろうか。とても彼に「いいね!」を押す勇気は出なくなった。
自分の性格も、歩いてきた道のりも、否定された
「それでは結果をご覧ください」
受付男性の声を合図に自分のスマホ画面を見ると、知広さんからも篤さんからも「いいね!」は押されていない。私は建築業とプログラマーの男性から「いいね!」をもらえた。もしマッチングしたいなら、この後のマッチングタイムで彼らを希望したほうが成功率が高まるだろう。
だが躊躇していた。「いいね!」をくれた人との会話では、私自身のことを話せる雰囲気にならなかった。一方で、少しでも自分の話ができた知広さんや篤さんからは「いいね!」がもらえない。私の本質に何か欠陥があるのだろうか。
また気になることもあった。このパーティでは「子どもの有無」をパーティ参加前に申告しなければならなかった。当日のプロフィールに記入するのに、である。もしかすると男性参加者は「子なし」の希望者が多かったのかもしれないと、パーティ終盤になって気づいた。男性に対し、「婚姻歴なしの女性多数」というような触れ込みで募集していることも考えられる。
子もち同士のほうが話が弾むこともあるが、一方で婚姻歴があったり、子もちの女性は絶対にダメという男性もいる。婚活中の人にとって重要な要素をぼかしたままではミスマッチが起こりやすい。しかし「初婚の女性のみ」で募集をかけると、女性の参加人数が少なくなる恐れがあり、そのように告知できなかったのだろう。
このパーティでは自分の性格も、歩いてきた道のりも否定されたような気持ちになり、その後のマッチングタイムでは誰も希望せずにスマホをオフにした。(続く。第7回は12月26日11時に公開予定)