背景にある韓国IT大手ネイバーとの微妙な関係
今や、コミュニケーションや行政サービスの基盤として国内約9600万人に広く使われているLINE、ニュースの提供をはじめネットサービスの総合センターとして5400万人余りの利用者を誇るヤフー。その両者が合併したLINEヤフーは、名実ともに日本を代表するIT企業であることは間違いない。
それだけに、「事件」の影響は深刻で、罪深い。
総務省は、たび重なる個人情報の管理体制の不祥事を受けて「ガバナンスのあり方を見直す必要がある」と警告しており、システムの再構築はもちろん組織としてのあり方も問われることになった。
ここで、不祥事が続く原因として、ネイバーとの微妙な関係に触れざるを得ない。
旧LINEは、もともとネイバーの子会社だった。LINEヤフーの筆頭株主Aホールディングスはネイバーとソフトバンクが50%ずつ出資しているから、現在も親子の関係といえる。つまり純粋な「日の丸プラットフォーム」ではなく、半分は海外企業なのだ。
ところが、あまりに近い関係のため、ネイバーが海外企業であることの認識が薄くなりがちで、個人情報の管理が甘くなっていたのではないかという指摘がされている。もし、そうなら、経済安全保障の面からも経営陣の意識改革が急務になってくる。
「日の丸プラットフォーム」を守るためにやるべきこと
当然のことながら、LINEヤフーの事業展開にも暗雲が漂う。
最大の合併効果と位置づけるLINEとヤフーの利用者IDの連携は、「楽天経済圏」に対抗する「LINEヤフー経済圏」の確立に向け、傘下のさまざまな電子商取引(EC)サービスの間で相互送客を活性化するための必須アイテムだ。低迷しているEC事業の起爆剤としての期待は大きく、さまざまな誘客キャンペーンを講じて、合併から1カ月余りでID連携を済ませた利用者は約2000万人に達した。
だが、今後、「事件」を知って逡巡する利用者が続出しそうで、LINEヤフーの野望は挫折しかねない。
また、12月に詳細を決める予定だった500億円規模の社債の発行も中止に追い込まれた。
21年3月の経営統合直後に起きたデータ管理不備問題は、その後の2年半の停滞を招いた。ようやく体制を立て直して合併したものの、またもや同様の情報管理問題でつまづいてしまった。
米国の巨大IT企業が闊歩する中、最大手の「日の丸プラットフォーム」が自壊しては笑い話にもならない。
今や生活インフラとなったLINEヤフーにすぐにとって代わるような国内のネットサービスは見当たらない。それだけに、LINEヤフーが真剣なガバナンス改革と徹底した情報管理体制の再構築を早急に進めてほしいと願うのは、筆者ばかりではないだろう。