ドライバーを苦しめる「小口・多頻度・ジャストインタイム化」
物流コストの大幅な低下以降、荷主の多くが物流に対して使い放題のような感覚を持ち始めました。輸送料が安価であるがために、例えば少量の製品を「明日までに持ってきてほしい」といった依頼を、頻繁に繰り返すようになってしまったのです。そのため、物流業界では近年「小口・多頻度・ジャストインタイム化」が急速に進行しています。
直近25年間の推移を見ると、1件あたりの貨物量が半減しています。1990年度は1件当たり2.43トンの貨物を運んでいましたが、荷主が「小口・多頻度・ジャストインタイム化」を物流事業者に求めた結果、2015年度には1件当たりの貨物量は0.98トンにまで落ち込みました。
一方で物流件数はほぼ倍に増えています。90年には1365万件あまりだったものが、2260万件あまりに膨れ上がっているのです。
その結果、各トラックの積載率は40%を下回る状態が続いています。つまり、いま街を走っているトラックの荷台には荷物は4割しか積まれておらず、残り6割は空気を運んでいるも同然なのです。
このまま何もしなければ、2024年度には最大14%(4億トン)もの輸送能力が不足するとの試算があります。ですが、この低すぎる積載率を50%程度にまで上げただけでも、これらの輸送能力不足は十分回避できると私たちは見込んでいます。
しかし、積載率は物流事業者やドライバーの努力だけでは上げられません。ここに業界構造の最大の問題点があります。
「物流のために戦略を変える」という発想が企業にない
積載率を上げるには、物流事業者にとっての“お客さま”である荷主の意識改革が不可欠です。荷主が「1品だけを明日までに」ではなく、他の品物とまとめて2日後に、あるいは週1回の定期配送時に持ってきてくれればいいと言いさえすれば、積載率問題は解決するでしょう。
とはいえ、配送回数が減れば荷主は欠品や在庫過多のリスクが高まります。これを防ぐには、配送回数や積載率を見据えて販売・製造戦略を立てる必要がありますが、前述の通り荷主企業の多くには「物流=使い放題」という意識が根づいてしまっています。従って、物流のために他の戦略を変えるという発想が生まれにくくなっています。