東京個人タクシー労働組合・執行委員長の秋山氏は語る

自交総連・東京地方連合会で「東京個人タクシー労働組合」の執行委員長・秋山芳晴氏は言う。

「タクシー不足がメディアでやたらと報じられますが、そもそもタクシーは本当に不足しているのか。適正な実車率は50~52%と言われている中、東京はまだ48%です。ちゃんと回せばなんとかなるはずです。また、京都駅では駅の入構許可を申請しても、許可がおりないのが200台もあるんです。新規参入者には入構券が出ないので、駅に入れないのに、観光客のための車が足りないと報じられてしまう。

だったら、京都駅の入構許可200台をなぜ増やさないのでしょうか。そもそも昔は早番、遅番がきっちりあって、需要と供給のバランスが取れるようにまわっていたのに、2002年の規制緩和によって乗務員の出庫時間と帰庫時間が多様化していきました。表向きは個人の働き方を尊重しているということにして、公共交通機関の役割を放棄したわけです」

しかし、現実問題として一部地域で起こっているタクシー不足をどう解消したら良いのか。秋山氏はバスの廃線問題と絡めて、こんな提言をする。

「タクシーやバス会社は中小企業がほとんどなので、独自採算で厳しいんですよ。そこを例えば国が補助すれば、高い運賃の問題も緩和できると思います。あるいは、補助がなくとも、大阪・富田林などで運行の金剛自動車の路線バスが、運転士不足などで廃線になったようなケースに、個人タクシーを派遣するのはどうでしょうか。われわれ個人タクシーの乗務員は中型免許と二種免許を持っている人が多いので、28人乗りまでのマイクロバスを運転できる。朝晩だけバスを運転し、空いている時間にタクシーをやれば、バスを廃線にしなくて済むから、利用者も助かるし、我々も社会貢献ができて、一石二鳥だと思います」

写真=iStock.com/gyro
京都駅のタクシー待機場所、2017年(※写真はイメージです)

まずタクシー不足の問題を解消する施策を打つべきでは

さらに秋山氏が挙げた例は、「ニセコモデル」という取り組み。これは、インバウンドのオーバーツーリズムによる課題解消に向け、北海道ハイヤー協会、倶知安くっちゃん町、ニセコ町、GO(タクシーを呼ぶためのアプリ)が協力し、観光客の増えるスキーシーズンに、札幌・東京などから応援車両を派遣するというものだ。

「同じように例えば観光シーズンだけ、あるいは空港など需要のある場所に対し、タクシーの営業区域の規制を緩和して周辺地域から空いている車両や乗務員を派遣すれば、解決できる部分はたくさんあると思います」

本来ならば、こうした車両不足や運転手不足をどのように解消するかの議論が先にあるべきところ、それがほとんどない状況で、一足飛びに「ライドシェア導入の必要性」ばかりが一部著名人により主張され、メディアで大々的に取り上げられる。この流れに不安や危険を感じるのは自然なことではないだろうか。

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