ベルリン周辺が最大の繁殖地に
なお、この図によれば、ベルリン市(BE)を囲むかなり大きな州であるブランデンブルク州(BB)が、ドイツでの狼の最大の生息地、および繁殖地となっていることがわかる。多くは、お隣のポーランドから移動してきたと思われる。
では、肝心の頭数はというと、ブランデンブルク州の狩猟協会によれば、700~1000頭。このところ毎年30%の割合で増えているため、正確な数が掴みにくいという。
それに比してかなり正確にわかっているのは群れの数で、52組。群れの定義とは、少なくとも8頭の成獣からなり、そこに2組のペアと、前年、および前々年に生まれた若い狼が含まれていること。そして、群れを成さずにペアで行動している狼が10組。さらに、それに加えて、この統計年に生まれた子供の狼が約190頭いるとみられる。
こんな状態だから、ドイツ全体で何頭の狼がいるのかも正確には割り出せないのだが、DBBWの推計によれば1339頭。なお、下記のグラフは、群れ(赤)とペア(茶色)の数の、2000年から2022年までの変化を表したもの。どちらも2007年ごろを境に、急激に増えている。
1回の襲撃で40頭の羊が殺されたことも
一方、狼による被害状況のほうは、DBBWが正確につかんでおり、それが図表3のグラフだ。黒が襲撃の数で、赤が犠牲になった動物の数。このグラフは2020年までだが、DBBWによると、2022年は4366頭で、前年比29%増だった。
狼の害は畜産農家にとっては脅威だ。ドイツには狼の天敵は存在しないため、何もしなければ増え続けるのは自然の理で、犠牲の9割が羊と山羊だ。その他、アルパカ、子牛、子馬、時には馬や牛の成獣までやられるというから、狼の威力はバカにできない。
狼の中には特別頭の良い個体がいて、それがリーダー格になって群れを引き連れ、陽動作戦なども使って次々と家畜を襲う。森の中で鹿やウサギを追うよりも効率はすこぶる良い。一回の襲撃で40頭の羊が殺されたこともあったという。しかも、狼は動くものがなくなるまで狩り続けるというから、事後の景色は凄惨な図になり、当然、農家のショックは大きい。