岸田政権の少子化対策は評価できるか

【パックン】それはある程度、哲学的な進展もあると思うんです。男女平等もそうですし、LGBTQの概念もある。ただそれは狙っているわけではなく、「結婚しなくても人生は楽しい」「私1人でも経済的な活動はできる」「奥さんや子どもがいなくても男として認められている」と思う人が増えて、少子化が起きています。

【エミン】おっしゃる通り。

【パックン】そこで岸田政権は異次元の少子化対策を発表したわけです。児童手当の拡充による経済的支援や子育て家庭を対象とした支援などが検討されています。より働きやすく、家庭を持ちやすい世の中になるのはいいと思うけど、少子化を食い止める効果があるかどうか。

【エミン】同じようなことは欧州ではずっと行われていますね。たとえば、ドイツは40年、50年前から取り組んでいます。

【パックン】手厚い福祉制度がありますね。

【エミン】ところが、大して人口は増えていないんですよ。そう考えると、やはり経済的な支援や働き方改革だけでは解決しないでしょう。さきほどの哲学的な話は、世の中の流れなので岸田政権の政策でどうにかできるものではない。出産や育児のために女性が仕事を辞めなければいけない社会を変えるのはいいことですけどね。

いまや子どもは嗜好品に近くなっている

【パックン】日本では子どもを18歳まで育てるのに1000万~2000万円かかるという数字をよく目にします。教育費を軽減する政策は実施してほしいと思いますが、経済的な理由が一番ではないですね。

【エミン】私もそう思う。

【パックン】より自由に働けるようになるのはいいことですけど、子どもを必要としない人が多い。昔、子どもは働き手でした。とくに農業では労働力と考えていた。しかしいまは、ほとんど嗜好しこう品に近い。「品」と言っていいかどうかわかりませんけど、嗜好品でぜいたく品ですね。

【エミン】そうですね。

【パックン】必要だからつくるものではなく、好んでつくるもの、育てるものになっています。

【エミン】昔は、老後の世話をしてくれる保険でもあったわけです。たくさん子どもがいれば、「1人ぐらいは面倒見てくれるだろう」と。いまは子どもがいても世話してくれるかどうかわからないからね。

【パックン】子どもがいなくても老後はなんとかなりますし。

【エミン】40歳、50歳になっても親の世話になっている人もいますから、親は本当に大変だと思うよ。

【パックン】さまざまな事情があるから、ひとことふたこと? では片付けたくないと思うけど、自分の子どもにはしっかり自立してほしいと思っていますね。

撮影=市来朋久
教育費の負担を減らす政策には賛成だが「経済的な面だけが少子化の理由ではない」とパックンさん。